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40話 ページ40

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「クロ、おはよ」
「先輩おはよーございます、お迎えご苦労様です」


朝、いつも通りに幼馴染を迎えに来た黒尾は目を丸くした。
Aと研磨が同じ屋根の下から出てきた。
これはどういうことだ。


「……や、何で家から二人一緒に出てくんの!? キョリ近いなーとは思ってたけど、やっぱそうなの、お前ら。 展開早くね?」
「ちょっと、変な勘違いやめて。 文化祭の仕事一夜漬けしただけだし、おれとAは潔白。」


ね、A? こちらに話を振られたので、こくりと頷く。

普段静かな研磨と何かとお喋りなAの立場が、今日は妙に逆転して見えた。
これは……明らかに何かあった時のやつじゃねえか! 黒尾はなんとなく察したが、彼らの複雑な関係に口出しするのも野暮だと思ったので、あえて追求はしないでおいた。

そこから三人でゆるく歩き、Aは駅で彼らと別れた。
去り際に一言、研磨はAに残す。


「……じゃあ、おれが言ったこと考えておいて」


どんな答えでも、おれは構わないから。

研磨の声が、耳に残響する。
今のすり減った脳では、きっとこの問題を処理しきれない。

Aは家に帰り、とりあえず仮眠を取るために布団にダイブした。
相当疲れていたのか、そこからすっかり動けなくなる。

__攻略、してみるね
いつしか、彼から言われたその言葉を思い出した。

無数の選択肢だけ与えて、決断は私に全部丸投げ。
きっと研磨は分かってるんだ、どうすれば最後に私を手元に置いておけるか。
束縛が嫌で、自由でありたくて、全部私の勝手で物事を進めたい。 それを理解しているから、彼はこのようなやり方で徐々に王手へと駒を進めている。


(……焚き付けたのは私からだったのに、なんか、逆転してる気がする)


その違和感に今頃気づいた時点で、すでに自分は追い詰められているのではなかろうか。
正直、研磨を見くびっていた。 まさか、こんなことになるだなんて。


「けんま、かわいくねー……」


一言呟き、目を閉じる。
もうすぐ文化祭は本番だ。 生徒会へ提出するプリントも完成したことだし、義務は果たせている。
休み明けに研磨とどのような顔をして会えばいいのか分からない。
でも、彼と気まずくなることだけは避けたい気持ちでいた。


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まめ - 番外編…だ、と……?!ありがとうございますッッッ!!! (4月23日 16時) (レス) @page47 id: 99eca05f77 (このIDを非表示/違反報告)
涼夏 - 待ってましたぁ!!!ありがとうございます。いやー新学期始まって癒しがなかったもんですからありがたやっ!! (4月21日 22時) (レス) @page47 id: b5371def11 (このIDを非表示/違反報告)
食べる(プロフ) - なゆちさん» 初めてコメントしてくださったときのこと、覚えています!当初は夢ジャンルに復帰したばかりでしたので、すごく丁寧で温かいあの一言が心に沁みてました🙏毎度、ありがとうございます! (4月21日 18時) (レス) id: 52b293a903 (このIDを非表示/違反報告)
食べる(プロフ) - 涼夏さん» こちらこそ、そう言って頂けて嬉しいです。長い間、読んでくださりありがとうございます!日頃の癒しになれたのであれば、良かったです🙏 (4月21日 18時) (レス) @page47 id: 52b293a903 (このIDを非表示/違反報告)
なゆち(プロフ) - 完結おめでとうございます🎉初めてのコメントをしてから約一ヶ月も経っていて、少しびっくりしちゃいました笑食べるさま、とてもかわいい研磨くんの素敵なお話をありがとうございました><次の作品も楽しみに待ってます💞 (4月9日 5時) (レス) id: 782e12ed33 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:食べる | 作成日時:2024年3月7日 17時

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