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38話 未遂、だがしかし ページ38

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流石にこの発想は魔が刺している自覚がある。
でも好奇心には勝てなくて、Aは彼の薄い唇にそっと近づいた。

……のだが、実際に重ねる度胸はなくて。
結局、すんでのところで止まって引き下がった。
これはきっと彼との間にある信頼を失う行いだと思ったから。
寝込みを狙うだなんて、こんなこと許されない。
研磨の寝顔はかわいくて、その清さを殺そうとしたことに罪悪感が生まれる。
ごめん、研磨。 一言こぼして、隠れるように布団に顔を埋めた。


「…………あーあ、やめちゃうんだ。 していいのに」


まさか、うそでしょ。
バッと顔を上げると、半身を起こした研磨とばっちり目が合う。
こいつ、もしかして狸寝入り……!?


「ちょ、起きてたの!? なにそれ、いつから?」
「最初からずっと」
「うわ……その、ほんとにゴメン」
「なんで謝るの? したいならすればいいじゃん、キスくらい」


いつも通りの口調でそう言う研磨に、頭が追いつけない。
驚きや羞恥でパンクしそうになる。
なんだそれ。 キスくらいって、どういうことだ。


「や、だって、あんた本気で言ってる?」
「本気も何も、Aにされて嫌なことなんて一つもないから、おれ」


変に悩まなくても、全部許してる。

研磨のその言葉に、Aは顔が熱くなった。
こいつ、本当に何されてもいいんだ。 それって、なに? 恋人、親友、ただの同級生?


「ねえ、研磨にとって私ってどういう立場なの? 全部許すって……そんなのさ、私どうすればいいの」
「どうって、それはAが決めて」
「なんで私? 研磨の考えが聞きたい」


感情論で押しているのではない。
単純に、彼が何を考えているのか知りたい。
研磨は少しだけ間を置いて、ゆっくりと口を開く。


「……Aが付き合いたいなら付き合うし、親友がいいならそれに合わせる。 最終的におれがAの隣にいられるなら、その過程はなんでもいいってだけ」


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まめ - 番外編…だ、と……?!ありがとうございますッッッ!!! (4月23日 16時) (レス) @page47 id: 99eca05f77 (このIDを非表示/違反報告)
涼夏 - 待ってましたぁ!!!ありがとうございます。いやー新学期始まって癒しがなかったもんですからありがたやっ!! (4月21日 22時) (レス) @page47 id: b5371def11 (このIDを非表示/違反報告)
食べる(プロフ) - なゆちさん» 初めてコメントしてくださったときのこと、覚えています!当初は夢ジャンルに復帰したばかりでしたので、すごく丁寧で温かいあの一言が心に沁みてました🙏毎度、ありがとうございます! (4月21日 18時) (レス) id: 52b293a903 (このIDを非表示/違反報告)
食べる(プロフ) - 涼夏さん» こちらこそ、そう言って頂けて嬉しいです。長い間、読んでくださりありがとうございます!日頃の癒しになれたのであれば、良かったです🙏 (4月21日 18時) (レス) @page47 id: 52b293a903 (このIDを非表示/違反報告)
なゆち(プロフ) - 完結おめでとうございます🎉初めてのコメントをしてから約一ヶ月も経っていて、少しびっくりしちゃいました笑食べるさま、とてもかわいい研磨くんの素敵なお話をありがとうございました><次の作品も楽しみに待ってます💞 (4月9日 5時) (レス) id: 782e12ed33 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:食べる | 作成日時:2024年3月7日 17時

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