36話 ページ35
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本格的な準備期間に入り、午後の時間割は殆どそのために当てれらた。
放課後、お化け屋敷の場所は自分達の教室ではなく大きな空き教室を使うとのことで人手はほぼそちらへ流れており、静まったこの空間にはAと研磨しかいない。
「ごめんね研磨、せっかくのオフなのに手伝わせちゃって」
「ホントにね。 一緒にクエスト進めようって言ったのはそっちなのに……なんでおれがこんなのしなきゃいけないの?」
「後で好きなの奢るから機嫌直してよー。 でも実行委員の子大変そうだったし、手伝ってやりたいじゃん」
そう言うAの目の下には、薄くクマができていた。
机上に広がる沢山の書類、それらは全てAが個人的に引き受けてしまった、クラス企画に関する生徒会への提出物だった。
当初としては広報の仕事を要領良く終わらせて残りは研磨と上手くサボる手筈だったのだが、すっかりその予定も狂ってしまった。 研磨は恨めしそうにAの作業を見つめる。 彼女の手にはペンダコができていた。
「……A、ちゃんと夜寝てる?」
「ぼちぼちね。 あ、そこ教室の設置物の詳細書いといて。 絵でいいよ」
「わかった」
「へへ、ありがとね。 持つべきものは研磨ネコだよー」
覇気のない声、Aがその身に疲労を溜めていることは一目瞭然だった。
「……やっぱさ、休憩した方がいいんじゃない? Aガタきてるよ」
「そお? でもこれ今日中に終わらせたい」
「持ち帰れないの?」
「んー」
A自身、これがオーバーワークであることの自覚はあった。
睡眠不足と目の前の文字の羅列で、脳は微かにバグを起こしている。
バグがある脳は、判断を鈍らせる。
「それ言うなら、研磨の家に持ち帰って欲しいくらいだよ。 あんたの部屋にこの紙全部ポイ、ね」
正直、研磨はいつも散々Aから構われている分、その仕事に彼女を取られた気がして不愉快だった。 Aの注意が、自分以外に向くだなんて面白くない。
なので、彼女が好きそうな「楽しい」提案をしてみることにした。
「じゃあさ、そうすればいいじゃん。」
「……ええ、どういうことよ。 ほんとにポイしていいわけ?」
「おれの家で続きすればいいってこと。 そうすればクエストも出来るし、プリントも二人で片せば明け方には終わるんじゃない」
極め付けに、この一言。
「明日は週末だし、“プチお泊まり会“みたいで楽しそうだと思うよ」
研磨には分かる。A、こういうの好きでしょ。
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まめ - 番外編…だ、と……?!ありがとうございますッッッ!!! (4月23日 16時) (レス) @page47 id: 99eca05f77 (このIDを非表示/違反報告)
涼夏 - 待ってましたぁ!!!ありがとうございます。いやー新学期始まって癒しがなかったもんですからありがたやっ!! (4月21日 22時) (レス) @page47 id: b5371def11 (このIDを非表示/違反報告)
食べる(プロフ) - なゆちさん» 初めてコメントしてくださったときのこと、覚えています!当初は夢ジャンルに復帰したばかりでしたので、すごく丁寧で温かいあの一言が心に沁みてました🙏毎度、ありがとうございます! (4月21日 18時) (レス) id: 52b293a903 (このIDを非表示/違反報告)
食べる(プロフ) - 涼夏さん» こちらこそ、そう言って頂けて嬉しいです。長い間、読んでくださりありがとうございます!日頃の癒しになれたのであれば、良かったです🙏 (4月21日 18時) (レス) @page47 id: 52b293a903 (このIDを非表示/違反報告)
なゆち(プロフ) - 完結おめでとうございます🎉初めてのコメントをしてから約一ヶ月も経っていて、少しびっくりしちゃいました笑食べるさま、とてもかわいい研磨くんの素敵なお話をありがとうございました><次の作品も楽しみに待ってます💞 (4月9日 5時) (レス) id: 782e12ed33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:食べる | 作成日時:2024年3月7日 17時