35話 新学期 ページ34
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新学期、九月とは言え、まだ夏の暑さは現役の様子。
午後のHR、気を改めよということで席替えが行われた。
「……で、わざわざ席交換してそこに来たの?」
「そ。 研磨だって、隣は仲良しの方がいいでしょ? どーぞよろしく」
「まぁ……ヨロシク」
研磨はため息をついた。
Aは周りの目を気にしない。 ただ、あまりにもそれが過ぎる。
今日一日、Aが研磨のことを執拗にからかってきたため、クラスメイト達からの「なぜこの二人?」という目線をひしひしと感じていた。
「うーわ、Aがまた孤爪いじめてる。 こづめー、迷惑だったらそいつ蹴っていいよー!」
「やっぱ二人謎メンツすぎる。 なんで仲良いん? 聞きたーい」
Aは浅く広くクラスに友人が多い。 そのせいで、ずっとこの調子だ。
目立つことが嫌いな研磨にとっては、少しだけやりにくい空気。
「うるさーい、私が研磨のこと勝手に気に入ってんの! ハイハイ、この話終わりね」
あ、おれがこういうの苦手だって、気づいてくれた。
研磨は、Aにだけ聞こえる声量で、小さく礼を言う。
「……えっと、アリガト」
「気にすんなし」
そう言って、Aは研磨の頭をくしゃっと撫でる。
夏休み明け、彼女のそういうところは全く変わっていなくて正直安心した。
席替えが済み、委員長が黒板に何かを箇条書きする。
「次、文化祭の出し物決めていきたいと思いまーす。 ぼちぼち準備進めなきゃ間に合わないので〜」
文化祭、そうか、そんな時期か。 九月末が本番なのだ。
メイド喫茶、アクティビティ系、演劇などの案が出るが、他クラスとの兼ね合いもあり、話し合いの結果お化け屋敷をすることに決定したらしい。
(仕事どうしよう。 とりあえず裏方……)
「ねー、事前広報のところ、新田と孤爪って書いといてー。 私達そこ希望!」
Aの言葉で、さっとそこに名が記される。
事前広報、他にやりたい人もいなければ、仕事量も少なくて済む。 何より、個人で作業を進められるので、研磨にとってこの選択は悪くないものだった。
「A、分かってるじゃん」
「いえーい。 研磨なら絶対これ選ぶなって思ったの。 あ、大好きだよー」
「えっと……急に?」
「ハハ、そう。 急に言うのが楽しいんじゃん」
文化祭準備、サボりなら付き合うよ。
Aは気の抜けた笑顔で研磨に応える。
九月の独特な暑さのせいか、研磨は、少しだけ熱が体にこもっている気がした。
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まめ - 番外編…だ、と……?!ありがとうございますッッッ!!! (4月23日 16時) (レス) @page47 id: 99eca05f77 (このIDを非表示/違反報告)
涼夏 - 待ってましたぁ!!!ありがとうございます。いやー新学期始まって癒しがなかったもんですからありがたやっ!! (4月21日 22時) (レス) @page47 id: b5371def11 (このIDを非表示/違反報告)
食べる(プロフ) - なゆちさん» 初めてコメントしてくださったときのこと、覚えています!当初は夢ジャンルに復帰したばかりでしたので、すごく丁寧で温かいあの一言が心に沁みてました🙏毎度、ありがとうございます! (4月21日 18時) (レス) id: 52b293a903 (このIDを非表示/違反報告)
食べる(プロフ) - 涼夏さん» こちらこそ、そう言って頂けて嬉しいです。長い間、読んでくださりありがとうございます!日頃の癒しになれたのであれば、良かったです🙏 (4月21日 18時) (レス) @page47 id: 52b293a903 (このIDを非表示/違反報告)
なゆち(プロフ) - 完結おめでとうございます🎉初めてのコメントをしてから約一ヶ月も経っていて、少しびっくりしちゃいました笑食べるさま、とてもかわいい研磨くんの素敵なお話をありがとうございました><次の作品も楽しみに待ってます💞 (4月9日 5時) (レス) id: 782e12ed33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:食べる | 作成日時:2024年3月7日 17時