検索窓
今日:101 hit、昨日:80 hit、合計:103,470 hit

32話 合宿最終日 ページ32

.


 ついに迎えた、合宿最終日。
短い期間だったが、臨時マネージャーとして活動できたのは良い経験になったとAは思う。
これにてAの夏休みのボランティアは終わったわけだ。 無事で……とは言えないが、なんとかやり遂げた。


「ねえ、Aは合宿終わってもマネージャーやるの?」


監督らが用意した、ご褒美という名目のバーベキュー。
Aが肉を頬張る横で、ふと研磨はスマートフォンから目を離す。


「あーそれさ、私はここで終わるつもり。 クロー先輩にも話してるよ」
「ふーん、そうなんだ」
「なんでそんなこと聞くの? うわ、もしかして、研磨は私に残って欲しいんだ?」
「まあ……そんなとこ、かも。」
「えー、あんたいいこと言うじゃん。 うれしー」


お礼にお肉あげる。
Aは箸で摘んだ豚バラを差し出すが、脂身は苦手だからと断られてしまった。

正直、この短期間の合宿は楽しかったし、何かに従事するという経験をしたことのなかったAにとっては新鮮であった。
何より、研磨とこれだけ密度のある時間を共有できたことが一番嬉しかった。
マネージャーとしての仕事も覚えたし、記録からケアまで、なかなか優秀に義務をこなせていたと思う。
このまま音駒バレー部のマネージャとして継続しても、何ら問題はない。

それなのになぜ、ここで区切りをつけようとするのか?
研磨はそのことが気がかりだった。


「……A、バレー部いてもいいのに」
「まさか、これ以上更に奉仕しろって言うの? むしろ私は奉仕されたい側なんだけど。 人の上に立つべき人間なので」
「ええ……? なにその自信、おかしいよ」
「おかしくない。 私が世界の正解なんだ!」


がぶり、焼きすぎて硬くなった肉片を噛み切るその姿は、その発言も相まって、さながら猛獣に見えた。 なんて恐ろしい。


「そもそも、私みたいな半端者が本気で全国目指すようなチームに居座るのは場違いだよ。 あんた達に対して失礼すぎる。 それに、今回の合宿だって、クロー先輩から「研磨を好きにしてどうぞ」って条件出されて手伝ったんだし。 100パーセント下心なんだよ」


別に、バレー部を手伝いたくてやったわけじゃい。
あなた達はバレーをしに、私は研磨をお目当てに、この合宿に来た。

音駒バレー部が立派な部であるからこそ、自分のような中途半端な存在は不要だとAは感じていた。


.

34話→←31話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (295 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
892人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

まめ - 番外編…だ、と……?!ありがとうございますッッッ!!! (4月23日 16時) (レス) @page47 id: 99eca05f77 (このIDを非表示/違反報告)
涼夏 - 待ってましたぁ!!!ありがとうございます。いやー新学期始まって癒しがなかったもんですからありがたやっ!! (4月21日 22時) (レス) @page47 id: b5371def11 (このIDを非表示/違反報告)
食べる(プロフ) - なゆちさん» 初めてコメントしてくださったときのこと、覚えています!当初は夢ジャンルに復帰したばかりでしたので、すごく丁寧で温かいあの一言が心に沁みてました🙏毎度、ありがとうございます! (4月21日 18時) (レス) id: 52b293a903 (このIDを非表示/違反報告)
食べる(プロフ) - 涼夏さん» こちらこそ、そう言って頂けて嬉しいです。長い間、読んでくださりありがとうございます!日頃の癒しになれたのであれば、良かったです🙏 (4月21日 18時) (レス) @page47 id: 52b293a903 (このIDを非表示/違反報告)
なゆち(プロフ) - 完結おめでとうございます🎉初めてのコメントをしてから約一ヶ月も経っていて、少しびっくりしちゃいました笑食べるさま、とてもかわいい研磨くんの素敵なお話をありがとうございました><次の作品も楽しみに待ってます💞 (4月9日 5時) (レス) id: 782e12ed33 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:食べる | 作成日時:2024年3月7日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。