28話 ページ28
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「ねえ、Aはさ、将来どうするとか決めてる?」
涙も落ち着いて、その沈黙を先に破ったのは、意外なことに研磨だった。
手は依然として繋いだままだ。 まるで、いつもそうしているかのような安心感があったから。
「将来かー。 なにこれ、真面目な話?」
「うん。 けっこーマジメに聞いてる」
「一応決めてるけど……まずそっちが話してよ。 そしたら教える」
「おれは、まだ何も決めてない。 大学は候補絞っただけで、詳しいことはそのうち考える。」
でも、結局、やりたいことやって生きてくことになると思う。
そう言った研磨の目はどこかまっすぐで、彼には彼なりの将来像が見えているらしかった。
「へー、そっか。 研磨らしいや。」
「Aは?」
「……実は、もう大学決めてる。 そこで語学を勉強して、卒業したら空港で働きたい。 あ、もちろん正社員ね!」
最初は、おしゃれで美人なキャビンアテンダントになりたかった。
だが、身長が足りなさそうで、最近諦めた。
もう高校二年生なのだ。 身長もこれ以上大して伸びなければ、将来について考える必要だってある。
いつまでこうして、のんびりしていられるか、分からない。
「なんで空港?」
「外部にいつでも繋がる場所だからかな。 海外でも田舎でもいいから、とにかくどこかへ行きたいんだと思う。
__矛盾してるんだけど、どこか行きたいとか思う反面、ずっと高校生のままでいたい、状況を変えたくないって気持ちがあって。」
大きな決断をする際、新しいものが好きな性分のくせに、実行しようとすると腰が重たくなる。
その気持ちは、研磨がよく見知ったものだ。
考えて考えて、正解を導き出すところまでは得意。
でも、そこで自分がアクションを起こすとなると、話はまた別なのだ。
「クサい話だけどさ、高校出たら私たち疎遠になるのかなってのが不安なんだよ。 東京の大学行ったとしても、しょっちゅう会えるわけじゃないじゃん。 特に研磨、自由人だし」
「会えなくなるの、イヤなの?」
「そりゃそうだよ! だって私、今一番仲いいの、たぶん研磨だよ。 クラスの子達も好きだけど、これだけ一方的に絡んでるのは研磨だけ。」
なかなか熱い言葉だが、Aにとってこれは告白ではないし、研磨もそれを分かっていた。
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まめ - 番外編…だ、と……?!ありがとうございますッッッ!!! (4月23日 16時) (レス) @page47 id: 99eca05f77 (このIDを非表示/違反報告)
涼夏 - 待ってましたぁ!!!ありがとうございます。いやー新学期始まって癒しがなかったもんですからありがたやっ!! (4月21日 22時) (レス) @page47 id: b5371def11 (このIDを非表示/違反報告)
食べる(プロフ) - なゆちさん» 初めてコメントしてくださったときのこと、覚えています!当初は夢ジャンルに復帰したばかりでしたので、すごく丁寧で温かいあの一言が心に沁みてました🙏毎度、ありがとうございます! (4月21日 18時) (レス) id: 52b293a903 (このIDを非表示/違反報告)
食べる(プロフ) - 涼夏さん» こちらこそ、そう言って頂けて嬉しいです。長い間、読んでくださりありがとうございます!日頃の癒しになれたのであれば、良かったです🙏 (4月21日 18時) (レス) @page47 id: 52b293a903 (このIDを非表示/違反報告)
なゆち(プロフ) - 完結おめでとうございます🎉初めてのコメントをしてから約一ヶ月も経っていて、少しびっくりしちゃいました笑食べるさま、とてもかわいい研磨くんの素敵なお話をありがとうございました><次の作品も楽しみに待ってます💞 (4月9日 5時) (レス) id: 782e12ed33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:食べる | 作成日時:2024年3月7日 17時