夜を歌う小鳥 (ページ9)

今日:15 hit、昨日:0 hit、合計:32,845 hit

涼襲来ページ9

翌日。午前中やることが無い大介は、同部屋の慧、謙と早速打ち解け、身の上話やら双六やらで盛り上がっていた。

「へぇ～、じゃあ桜は涼さんの弟分なんだね」

「凄いじゃん！桜凄いよ！」

おっとりとした口調の慧、兄貴肌の謙の二人は仕事中も二人で客に付くようで、話している時も息ぴったりだった。

「ねね、桜はまだ店に出る時の着る着物持ってないんだよね」

「うん」

大介と同じく背が小さい謙が「俺のなら着れるよね。貸そうか」と言いかけたその時だった。

「おはようさん！」

ピシャンッ、と勢いよく障子が開き、現れたのは...

「涼さん！」

「桜ほんとうに弟分だったんだねぇ～」

こんなところまで二人は息ぴったりだ。

普段着の着物をゆるっと着こなしている今日の涼は、昨日の艶やかな着物姿とは打って変わって男らしく涼やかだった。

「桜、外出るよ。あぁ...謙、少し洒落た着物桜に貸したって」

「は、はいっ！」

突然話しかけられ驚いた謙が、それでも瞬時に着物を出してきた。

昨日も思ったけど、涼さんは急に思い立つのが特技なのか...？

そんなこんなで大介の思考が追いついた時にはすでに、身ぐるみ剥がされ着替えさせられ、涼に担がれ、雪華楼の裏口に二人で立っていた。

「ところで涼さん、どこに行くんですか？」

「桜が店に出る時に着る服を買ってやろうと思ってさ」

涼さん優しい人......って、あれ？

「涼さん、話し方変わってる...？」

不意に京言葉が抜けた涼を不思議に思い尋ねると、涼は「それはね」と話し始めた。

「エセ京言葉なんだ。俺京都の人じゃ無いし、そもそも行ったことも無いしね。
ここに来たばっかりの時の客に京言葉を話す人がいて、使えるなぁって思ったから真似してんの。
本当の京言葉わかる人なんてここにはいないからそれでもやってけたりして」

一見滅茶苦茶な理由に聞こえるが、大介には、なぜ涼が花魁なのかがわかった気がした。

涼に連れられるまましばらく歩いて行くと、ある店の前で立ち止まった。

「ここが俺の行きつけの呉服屋」

そこは、いかにも。という言葉がぴったりの立派な構えの呉服屋だった。

涼が中の人に呼びかけると、真っ先に気づいた若い男がこちらに向かってきた。

それは

「お...恩人さん！？」

.