夜を歌う小鳥 (ページ5)

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辰哉さんあげます前ページ5

「涼！本気か！？桜は素質はあるとはいえ新人...というかまだ仕事もしたことが無いんだぞ！？」

照が動揺しながらもやっと言った言葉はしかし、涼には届いていなかった。

「ええやんええやん、ほな照さん、そういうことで～♩」

突然体が浮いたと思うと、俺は涼さんに担がれていた。

「え！？ちょっと、、！？」

「桜ちっこいなぁ～」

「うぐっ......」

アレヨアレヨと言う間に俺の体は運ばれ、ある一部屋に放り込まれた。

どうやらそこは涼さんの部屋らしく、今涼さんが着ているよう綺麗な着物や反物が沢山置いてあった。

「お帰りなさい...って誰ですか？その人」

丁度その時部屋を掃除していた三人の男のうち、一人が声を掛ける。
当たり前だろうが、彼等も目が点になっていた。

「この子は桜。今日からうちで働くことになったんやけど、俺の弟分になったんや」

「あの涼、俺には話が読めないよ...」

すると涼さんはケラケラと笑い「照さんもびっくりしてはったわぁ」と、なぜか満足気な表情で言った。

「あのぉ...そちらの方は？」

恐る恐る涼さんに聞いてみると、答えたのは涼さんではなく男自身だった。

「あ、俺は辰哉って言います！涼の禿してます！んで、こっちの二人は俺の後輩」

辰哉さんしか喋ってなかったのでほとんど影が薄かった二人が頭を下げる。
そんな折、またもや涼さんがとんでもないことを口にした。

「そや、桜の禿まだ決まってなかったやろ？」

「多分...」

俺はまだここに来たばっかりで禿というものが何なのか全くわからなかったが、決まってはいないと思ったので取り敢えずそう答えた。

「ほな桜に辰哉あげる。これからは辰哉が桜の禿な」

「まっ...待ってよ涼！何で俺！？」

これには辰哉さんが最も驚いているようで、持っていたはたきを放り投げ涼さんの腕にしがみついた。

「俺達、涼が雪華楼に来た時からずーっと一緒だったじゃん！」

涼さんは、必死の辰哉さんの手を取ると自らの目元まで引き寄せ、小首を傾げ辰哉さんを悩ましげな瞳で見つめ一言。

「辰哉...俺も名残惜しいんよ。でもなぁ、一番信頼しとるから任せられるんよ？辰哉ならわかるやろ？」

「うっ......わーかったよ、、ったくお前の頼みは断れねぇ」

辰哉さんは赤らめた顔を隠すようにそっぽを向くとあっさりと受け入れた。

「あれが花魁の技、、すげぇ...」

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