夜を歌う小鳥 (ページ22)

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桜の涙ページ22

「うっ...ひくっ......」

俺は泣きながら走っていた。廊下ですれ違う禿や男娼は皆驚いて桜の方を見たが、おかまいなしに走った。

「あぁ...っ！手紙くしゃくしゃになっちゃった...」

人気のない場所まで来て立ち止まり手紙を見ると、握りしめ過ぎた手紙はくしゃくしゃになってしまっていた。

「...どうしよ」

「桜っ！なんで急にどっか行くんだよ！」

「辰哉...！追いかけて、来てたんだ...」

「そりゃ追いかけるだろ。謙も慧も心配してたぞ」

ごめん...。と謝る。すると、辰哉が優しい声で言った。

「話せるなら話してほしいな。どうして泣いたのか」

本当は言いたくない。誰にも言わないつもりだった。でも言わないと今後一生このことは解決しない。一つ息を呑む。

「...馬鹿にしない？」

「もちろん。俺も馬鹿だし」

「......俺、字が読めないんだ...」

しばらくの沈黙の後、頭に柔らかな感触。辰也の手だ。

「そっか...家族のために寺子屋行かなかったんだ。偉かったな、桜」

「辰也...」

「でも良かったよ。病気なんだーとか言われたらどうしようかと思った」

顔を上げると、辰也が「これから覚えれば良いさ」
とくしゃっと笑った。

「っう...辰也ぁぁあ」

「も～、また泣くなよぉ～！目腫れちゃうぞ、あー手紙！手紙に涙落ちてる！」

「あ゛ーー！！手紙がぁ～～」

「ほら泣かないのっ！はい、涙拭いて。笑顔笑顔」

もう嬉しいのやら悲しいのやらなんだか訳がわからなかったけど、俺は結構泣いていたと思う。

この後、俺は涼さんのところに行き、涼さんにも自分が字を読めないことを伝えた。すると、涼さんが「手紙をくれた方にも正直に話して、それでその人が桜を嫌いになったらその方がそれだけの男だったってことさ」と言ってくれた。

「桜の魅力はそんなことじゃ変わらないよ」

ここに来てからまだ長くはないけれど、僕を包む空気はどこまでも優しかった。

正直、育ちの良いであろう亮平さんに言うのはまだ躊躇いがある。でも...

「亮平さん、俺を嫌いにならないかなぁ」

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