夜を歌う小鳥 (ページ21)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:32,833 hit

辰哉の動揺ページ21

頭撫でられた頭撫でられた頭撫でられた...！！

辰哉は動揺していた。頭を撫でられたことは単純に嬉しかったが、あの状況で照はなぜ頭を撫でてきたのだろうか。まさか照に思いを寄せていることを知られてしまったのか。様々な思考が駆け巡る。

照に想いを寄せているということは、桜にはばれてしまったが内に秘めた想いだ。仕事に差し支えが出るのもあるが、何よりこの気持ちが本人に気づかれ今までの関係が崩れてしまうのが怖いからだ。男娼遊郭をやっているからとはいえ、本人がそうとは限らない。

「なのに頭撫でられたくらいで、こんなに顔が熱くなってちゃ駄目だよなぁ...もっと上手く隠せるようにならなきゃ」

照にばれていないことを祈りながら着物を持ち上げる。着物を片付けたら桜のところに向かわないといけない。今日も仕事は山積みだ―――

ほつれや擦り切れた着物のお直しのため渡辺屋に着物を持っていったところ、翔太が出てきてお喋りに花が咲いてしまった。辰哉が雪花楼に戻った頃には時刻は昼を指していた。

「いけね、桜に手紙渡さなきゃ！今日桜はこの時間...部屋にいるな」

桜の部屋を覗くと、桜はいつも通り謙と慧と共にお喋りに興じていた。

「さーくらっ、お前にお届け物」

襖から顔を出し呼びかけると、俺に？身に覚えが無いなぁ...。と桜が不思議そうに首を傾げる。

「阿部亮平さん。って人から...」

「亮平さん！？なっ...なんで！？」

阿部亮平の名前を聞いた途端ぱっ、と立ち上がった桜を見て、謙と慧が面白いものを見つけたとばかりに顔を見合わせた。

「謙ちゃん謙ちゃん、亮平さんってさくちゃんが初めてお相手したお客さんだよね！」

「何かが起こる匂いがする...！」

駆け寄ってきた桜に封書を渡すと、桜はそれをゆっくりと開いた。

「さくちゃん、何て書いてあった？」

「こら慧ちゃん、急かさないのっ」

ところが、桜は手紙を開いたまま動かなくなってしまった。

「どうした桜、そんなに感動したか？」

その時、桜の目から一粒...二粒三粒と大粒の涙が溢れ出した。

「どうしたんだ！？」

「俺...俺......っ！」

「あっ！ちょっと！どこいくんだ！？」

涙を拭きもせず、桜は手紙を握りしめたまま廊下を走り去ってしまった...。

「どういうことだ...？」

全く今日は動揺してばっかりだ。

.