夜を歌う小鳥 (ページ20)

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照の朝後ページ20

「恋文...ですかね」

手紙をゆっくり封書に戻した辰哉が、しばらくだんまりを決め込んだ後にぽつりと呟いた。

「あぁ、俺もそう思う」

「昨日はただ喋っていただけなのに...こんなこと涼以来だ...」

「桜には意外と素質があるのかもしれないな」

そうですね、思わぬ掘り出し物かもしれません。と辰哉が頷く。
確かに桜が初めてここに来た時から、彼にはなんとなく他と違う何かを感じていた。突然彼を弟分にすると言いだした涼も、きっと同じように桜から何かを感じていたのだろう。

「そうだ、もしよければ俺がそれ渡しておきましょうか？」

「あぁ、なら頼んだぞ」

桜色の封書を辰哉に預ける。

そういえば辰哉は涼の禿から桜の禿に変わったのだった。しかも涼自ら提案したと聞いた。涼が雪花楼、いやここら一帯の遊郭街一の花魁になれたのは、本人の実力も勿論だが辰哉という優秀な禿が傍にいたことも大きい。そんな辰哉をわざわざ手放すなんて、涼は桜にどれほどの期待を抱いているのだろうか。まったく涼の考えていることは相変わらず読めない

そう考えると辰哉は涼の陰謀、はたまた桜の壮大な夢物語にずるずると巻き込まれていくのかもしれない...

そんな思いを巡らせ辰哉を見ると、心なしか彼が不憫に思えてきた。

「どうなるかわからんが頑張れよ」

「......！」

辰哉の頭をぽんぽん、と撫でて去った俺はこの時彼がどんな表情をしていたのか、どんな感情で俺を見ていたのか、まだ知る由も無かった。

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