夜を歌う小鳥 (ページ16)

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亮平の心情前ページ16

帰りたい帰りたい帰りたい...

高級遊郭雪華楼の一室。皆が盛り上がってきた頃、俺は箸を進める手が止まらなかった。隣には慧と名乗っていたか、美青年とそれにちょっかいをかけまくる同僚。

自分でも自覚はあるが俺はこういう場所に遊びに来られるような粋な男じゃない。遊び方がわからないし、第一真面目が取り柄の性分に合っていない。
気づけば一人だけ料理が無くなりそうだ。

いっそこのまま空気のように佇んでいれば...。そんな事を考え始めた時、襖が開いたような気がしたが
目をくれる気にもならなかった。

「お隣失礼します」

...どうやら空気にはなれなさそうだ。ため息を抑え俺は仕方なく声のする方へ目を向けた。

あれ？なんか雰囲気が違う...

隣に座った小柄な青年は、ここにいる他の男娼と違って色気というよりか、、可憐だった。

くるくるした瞳でじっと見つめられ、間が持たなくなった俺は「俺こういう所来るの初めてだから少し緊張してて、、」なんて格好悪い事を思わず口走ってしまった。
すると「実は俺も今日が初めての仕事なんです」
と彼が言った。

「そうなんだ。ならお互い初めて同士って訳だ」

「ですね。あっ！俺、桜と申します」

申します、なのに一人称は俺なんだね

俺は桜が、慣れた男娼が使いそうな客に合わせた嘘などではなく、本当に今日が初めてなのだと素直に思った。

「...ふふっ」

「どうしました？」

「可愛いなぁ、って」

「......へ？」

桜の真っ白な肌がみるみる赤く染まる。長い睫毛を伏せ照れる姿に、不覚にもときめいてしまった。

もしかして......恋、したのか？

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