夜を歌う小鳥 (ページ13)

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桜色の着物ページ13

「わぁ...！！すごい！」

落ち着きを取り戻した翔太に連れてこられたのは、膨大な量の着物が並ぶ大広間だった。

「渡辺屋は江戸一の取り揃えなんだ」

色とりどりの着物は、どれも大介が江戸に来る前は見たこともないような豪華な物だった。

あまりの壮麗さにぽかんと口を開け見惚れていると、翔太に「なんて顔してんだ」と笑われてしまった。

「だって、こんな綺麗で豪華な着物、今まで見たことなかったから...」

「桜！これ、桜にぴったりだと思わない？」

一足先に着物を見始めていた涼が、一枚の着物を開いた。

それは、白に近い桜色の地に桜が咲いている、他の豪華な着物とは一味違った可憐さを醸し出す一枚だった。

「どう？桜」

「涼さんに選んでもらえるなんて嬉しいです！俺、これにします！」

大介は、涼から受け取った桜色に、黄色に金色の刺繍が施された帯を合わせた。

「それじゃ、またお店で待ってるね」

「あぁ。気をつけて帰ってね」

「ありがとうございました！」

結局涼に普段着用、仕事用と計20枚も買って貰った大介は、重い着物を上機嫌に抱えて帰途についた―――

部屋に戻ると、辰哉に「行くなら俺も連れてけよ！」と怒られてしまった。

「だって涼さん急に来るんだもん！辰哉呼びに行く時間もなかったんだよ」

「まぁ確かに涼はそういうところあるかも」

納得したように見えた辰哉だったが、ふと顔色を真剣なものに変え言った。

「いいか、ここで自由に外出していいのは花魁の涼だけだ。それ以外の奴は客の要望で外出する他は滅多なことでは外には出られない。
これからはもし涼の誘いがあっても俺同伴じゃないと許さないからな。」

その言葉は、最初に辰哉に聞いたときよりも意外と重く、深く大介の心に刺さった。

「自由に外出られなくなっちゃうんだ...」

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