夜を歌う小鳥 (ページ11)

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恩人さんページ11

―――俺が「恩人さん」と呼んだその人は、どうやらこの立派な呉服屋、渡辺屋の跡取りだったらしい。

「でも、まさかこんなに早く再会できるとは思ってませんでした」

「俺だってお前が涼の弟分になったなんて信じられないよ」

恩人さん。改め渡辺翔太が感慨深く頷く。
店の奥に通された大介は、ちゃっかり饅頭とお茶をお呼ばれした。

「翔太さんのおかげでちゃんと親孝行出来そうです、む！饅頭ほいひぃ！」

「それは良かった」

飄々とした雰囲気の翔太は、すっかり大介のことを気に入ったようで、「そんなに美味いならこれ全部持ってけ」と饅頭の箱を丸ごと渡そうとした。

しかしその腕は大介に届く前に別の人に掴まれた。

「さっきから何、俺妬けちゃうんだけど」

ぶうたれた顔をした涼が、翔太を睨みつけて言った。

すると、先程まではへらへらと笑っていた翔太が一瞬で動揺し始め、

「り、涼、これは誤解だよ。うん。そう誤解」

なんて弁解を始めた。
大介も、これは自分にも非があると思い翔太の擁護をすることにした。

「涼さん、これにはちゃんと事情があってですね、翔太さんはただの...ただのって変か？俺の命の恩人なんです」

「そう！それそれ！たまたま命助けちゃった的な」

二人の必死な弁解を相変わらずぶうたれた顔で一通り聞いた涼は、しばらく黙った後、への字に曲げた唇をゆっくり開き「んなのに妬いてないから。俺は、二人が俺のことほったらかしで楽しそうにしてるのが寂しいだけ」と、もごもごと言った。

その発言を聞き逃さなかった大介と翔太は、顔を見合わせた。

「涼さん」

「な、なんだよ...」

「なんて可愛いんですか！！！」
「かぁわいいーーーーー！！！」

翔太が真っ先に涼に飛びかかる。

「寂しかったとかどんだけ可愛いの涼！」

「う...うっせー馬鹿！！可愛いわけないだろ！やめろ翔太！」

戯れ合う(？)翔太と涼を尻目に、大介はもう一つ饅頭を頬張った。

涼さん、最初会った時と雰囲気が違うっていうか、
こんな可愛らしい人だったのか。新たな発見だなぁ

しみじみと出されたお茶を啜っていると、翔太からやっと解放された涼が

「桜、やっと着物選べるな」

と、疲れた顔で微笑んだ。

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やっと戻ってまいりました！
阿部くんが出る本編までまだ少しかかりそうですが、お付き合いしてくださると嬉しいです！！