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かたかたと音がする。
やっぱり今朝も早起きしてた。
昨日は偶然キッチンで見かけて話をしたけれど、今日は顔が見たくて早起きした。
自分でもちょっと心配なんだけど…Aちゃんに気持ち悪いと思われないよう願いたい…。
JN「Aちゃん、おはよう。」
『ソクジンさん…おはようございます。』
JN「…あの…手の傷、大丈夫?」
『あ……………はい、大丈夫です…。』
しまった。
昨日の夜の打ち合わせの事とか泣きながら寝た事に触れないようにしようと硬く心に決めたが故に…。
自ら地雷を踏んでしまった。
案の定顔を赤くして俯くAちゃん。
JN「それなら良かった…うん。」
用意していた会話が終わってしまい、沈黙が流れる。
ちらりと顔を覗き見ると、ほんの少し赤いAちゃんの目尻に胸がちくりと痛んだ。
大丈夫だよ、って今すぐにでも安心させてあげたいけど…今の自分が話した所でややこしくなるだけだ。
Aちゃんの為にしてあげられる事、何かあったらいいのに。
…俺が、出来ること。
『……ソクジンさん?』
JN「ちょっとだけ、聞いてもらってもいい?」
『…はい。』
改まって言う俺を、きょとんとしながらも手を止めて向かい合ってくれるAちゃん。
元気が出ますように。
笑ってくれますように。
JN「…大丈夫、ほらいち、に、さん…〜♪」
『あ…。』
JN「〜僕の手をとって 笑おうよ 〜…♪」
『…この歌…。』
歌い終えて笑って見せると、Aちゃんの顔が、ほんの少し和らいでいた。
寝起きの掠れた歌声だし…かっこいいヘアメイクもステージ衣装もないけれど…。
JN「…今日はきっと、昨日より良い日になると思うよ。」
そう言って、ほんの少し勇気を出して、Aちゃんに手を差し出してみた。
少し間が空いて。
そっと、Aちゃんがその手を握ってくれた。
照れて、控えめな握手だったけど…何より嬉しそうに笑ってくれた事が嬉しくて。
思いがけず自分が満面の笑みになってしまった。
可愛いその笑顔を作ったのが自分である事が、すごくすごく嬉しくて。
『ソクジンさん…ありがとうございます。』
何か気の利いた台詞をかけてあげたかったけれど。
胸いっぱいで…それ以上言葉が出てこなくて…俺はAちゃんの手をきゅっと握り返した。
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作者名:そー | 作成日時:2019年10月13日 21時