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ユリ「…遅いからタクシーで帰りなさい。」
『はい…。』
ユリ「…明日、少し話せるかしら？」
『はい…。』
私にだけ聞こえるようにそう呟いたユリさんに、
それだけ答えるのが精一杯だった。
歩く音さえカッコイイと、思っていたヒールの音が今は胸に突き刺さる。
社長とヒョヌさんを乗せてユリさんの車が見えなくなるまで私は頭を下げて見送った。
しばらくそうしていて…きっともう見えてないだろうけど…頭を上げる気にならなかった。
Y「A」
『……。』
Y「代表に挨拶するか？」
ふるふると首を振る。
『この仕事終わるまではご挨拶しない方が…。取引に私情を挟みたくないし…。』
Y「わかった。じゃあこのまま社長を送ってから帰るから…お前ももう帰れるのか？」
『うん、タクシーで帰るね。』
Y「真っ直ぐ帰れよ、気をつけて。」
ユンギはそう言って車に乗り込んだ。
私はさっきと同じように車が見えなくなるまで頭を下げた。
沈んだ気持ちのまま宿舎に帰るとまだみんな帰ってきてなかった。
シャワーを浴びてユンギのベッドに横になる。
思い出すのはユリさんの笑顔のない顔ばかり…。
どれくらいそうしていたのか、物音が聞こえてきた。
挨拶……に行く気には申し訳ないけどなれなくて。
動けないまま、ドアが開く音を聞いた。
Y「…起きてるのか。」
『……ごめんね、お帰り。』
Y「……。」
ユンギがベッドに座って頭を撫でてくれた。
手の温かさと優しさがスイッチみたいに勝手に涙がこみ上げてきた。
何も言わずにただ優しく、優しく触れるユンギ。
『……ふ……うぇ…っ…。』
ゆっくりとユンギの方を向いて、久しぶりにちゃんと顔を合わせた。
ユンギがまた珍しくお兄ちゃんの顔をするから、次々と涙が溢れる。
ぽつり、ぽつりと職場での出来事を話すと、ユンギはただ相槌をうちながら静かに聞いてくれた。
Y「……実際、明日その話の内容を聞いてみないとこの先どうしようもない。」
『……うん。』
Y「だけどお前はただ、正直でいろ。後ろめたい事はぜず、真面目に、誠実に、思いやりを持って、ただただ自分に恥じないよう。そうすればどんな風に転んだとしても必ずそれが相手に伝わる時が来る。」
『…うん…ありがとう、ユンギ…。』
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作者名：そー | 作成日時：2019年10月13日 21時
