第五十四話 ページ10
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「やっぱり、私には、、、、私には選べないよ……」
抱きしめられた腕が離れた時、私は口を開いた。
止まった涙もまた溢れ出しそうに視界が歪む。
「二人の時間、もう奪いたくないっ」
涙がまた頬を伝う。
剛「……A、今、苦しい？」
「んぇ？」
剛「うぅん。Aの心が中々見えへんかったから聞いただけ。
その判断、その決断は、
僕らを思ったことで、Aの気持ちがないねん。
だから……
だから、Aの気持ちを見つけて欲しい。」
「わ、私は……」
決められないなんて我儘で、どうしたらいいの…？
私の気持ち。
光「…」
「私は、、、、
私は、2人が好き。
どちらかなんて選べないくらい。
……でも、その気持ちに恋愛が絡んでるかって聞かれたら、素直に頷けない。
でも、でもっ………
こうやって、人と家を共有するのってとっても楽しかった。」
そうだ、親と生き別れてからというもの、
たまに来る元カレと質素な夕飯を食べるくらいで、
一日中一緒にいたり、
テレビを一緒に見たり、
「お風呂お先ー」なんて掛け声だって、久しぶりのことだ。
「行ってきます」っていえば「行ってらっしゃい」と、
帰ってきたら「おかえり」って
そんな優しい言葉、久々なんだ。
それは幸せなことなんだ。
「まだ、一緒にいたい。
でもっ、
でも、二人が……
二人の人生の方が、絶対的優先だから。
二人が幸せなら、それがいい。
それが私の我儘。」
流れる涙は止まることを知らず。
私はそこまで言いきって俯いた。
光「じゃあ、俺引っ越そっかな」
方に置かれた手。
鼻をすする音が近くで聞こえてくる。
剛「僕も同じこと考えてた。」
光「でも、3人やったらもうちょっとおっきい部屋がいいな。」
剛「僕んちくらい？それとも光一くらい？」
訳が分からず顔を上げる。
目を細めて笑う二人の顔はきっと、二度と忘れないーーーー
光「一緒に住も、
俺らの幸せと、願い。
叶えてくれる？」
……
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作者名：さわ | 作成日時：2018年11月27日 13時
