第五十話 ページ6
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「はい、これがこういっ……光ちゃんの」
コトっと小さな音を立てて今晩のご飯、カレーの入ったお皿が光ちゃんの目の前に置かれる。
満足そうにニヤつく光ちゃんと、
その横で自分のカレーを待ちわびる顔が一気に曇る剛くん。
対象的な二人の表情。
光「ええやろ」
肘で剛くんを小突く光ちゃんは本当に外見だけ大きくなった子供のようだった。
「はい、これ剛くんの。」
盛り付けたお皿を剛くんの前に置いて、
自分のものも一緒に運ぶ。
剛「……」
「いただきまーーす」
私の掛け声で2人は慌ててスプーンを手に取った。
光「うっわうまぁ！」
目の前でニコニコと微笑みながらもぐもぐカレーを次々に口に運ぶ光ちゃん。
本当に子供っぽくて頬の筋肉が緩んだ。
剛くんも「おいしっ」って言ってるけどどこか上の空。
「剛くん？」
私が呼び掛けたのとほぼ同時に、剛くんが口を開いた。
剛「今日だけでもいいから僕もなんか違う呼び方して？」
眉毛が八の字に垂れている。
ぼそっと小さな声が「光一だけずるい」って言った。
光ちゃんにもその声は届いてたみたいで、
スプーンを持つ手が止まり
剛くんと私の顔を目線が行ったり来たりしていた。
剛「剛とか、なんかいつもと違う呼び方。」
「えぇ……呼び捨てはヤだよ」
一口スプーンにすくって口に入れる。
まだ冷めないカレーライス。
フーフーするの忘れてたから猫舌の私は軽く火傷をした。
「んん、じゃあつよちゃん」
口内の痛みを我慢しながら口の横についたカレーをサッと指で拭った。
光「……」
光ちゃんは一瞬私の方を見たがまたカレーに視線を戻した。
剛「つよちゃん？ｯｮ?」
私の言ったことを脳内で何度も繰り返すままに口から飛び出した言葉は剛くんが理解するまで永遠に繰り返された。
「つよちゃん、口の横にカレーついてるで？」
と剛くんに言えばやっと理解出来たのかかぁっと赤くなった。
やはりこの人は赤くなるタイミングが分からない。
光「えっ、俺にもやって？」
口元を綺麗にふき取ったあとだと言うのに目を見開いて「しまった！」と言わんばかりに周りの食べ物を探す。
でも、その途中で食べ物で遊ぶのはダメかと思い立ったらしくシュンっと背を丸めた。
剛くんはまだ赤いままカレーを口に運んでいた。
……
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作者名：さわ | 作成日時：2018年11月27日 13時
