ロイヤルミルクストーリー

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その後も、

神山くんは色々買い込んで、

大量の紙袋抱えて、お屋敷に戻った。


夕ご飯の後。


真莉ちゃんも片付けが終わったら、
今日は早めに家に帰ってもらったとかで、二人きり。


「重岡くん、今日こそピアノ弾いてや」


ねだられて、
浮かれてしもて。


少し緊張するけど・・・


今、二人で練習してる曲を。


神山くんも部屋のクローゼットからギター引っ張り出してきて。


一緒に合わせる。


神山くんの歌声、好きやねんな。


甘くて、そのくせ、透き通るような・・・



心地良く、後に残る。


研ぎ澄まされてく感覚。


この世界に二人だけ。


そんな錯覚に陥ってたんかもせん。


外の音なんか、耳に入ってけえへんかった。


「何やってるの？！」


氷のように冷たい声で、
一気に現実に引き戻された。


振り返ると、
青ざめた顔の神山くんのお母さんが立ってはった。


いつの間に帰って来はったんやろ。


真莉ちゃんの話では、
今日も遅くなるはずやったのに・・・


「どいてちょうだい。
これは、優希のピアノよ。
触らないでっ」


呆然としてる俺のこと、
力任せに、突き飛ばしてきはった。


「やめてやっ。
お母さん、俺が頼んでん。
ピアノの音、聴きたなって」


神山くんが俺を庇って、
覆いかぶさってくる。


神山くん越しに見えたその顔は、

まるで、何かに取り憑かれたような、
恐ろしい形相やった。
　

「何言ってるの、智洋。
ピアノの音を聴けなくしたのは、他でもない、」


お母さんの叫び声を、


「やめなさい」


お父さんの、冷静な低い声が遮った。


「あれは事故やったんや。
智洋のせいなんかやない。
もし誰かのせいや言うなら、
優希が亡くなったんは俺のせいや」


泣き崩れていく、お母さんを抱きしめてはる。


神山くんは、悲しみを堪えて、少し笑って。


俺の手を引いた。


「重岡くん、行こ、」


「行こって、どこ、」


「どこでもええん。
どっか、ここやないとこ」



神山くんの言うままに、
屋敷を飛び出して来た。


運転手さんがガレージの白塗りのベンツの前で待ってはったけど。


こっそり見つからへんように、忍足で通り過ぎて。


門を出たら、一目散に駆け出す。


追手があるわけでもないのに、

並んで、息切らして走ってた。

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