ロイヤルミルクストーリー

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「ほなら、練習は週３回で、木曜の今日もあるねん。
行こ、」


ベッドから降りようとしてる神山くんを慌てて止める。


「お腹のぐるぐる止まってからな」


「もう治ったもん！」


「次から無理して食べたらあかんで？
油が合わへんねやろ？」


くすって笑た時。


保健室のドアがノックされた。


小瀧くんの突撃か？身構えたら、


扉から覗いてんのは、コワモテのスーツの男の人。


一昨日、病院で事情聞かれた刑事さんやった。

圧あるし、異様な雰囲気。


ちょいちょい手招きされて、
神山くんと二人、冷えた廊下に出る。


「教室行ったら、二人ともここや聞いて。
一昨日の轢き逃げ犯が捕まったわ。
逃げたトラックのナンバー、
撮影してくれとった学生がおってん」


「そうですか」


俺は身体も何ともないし、
もうどっちゃでもええと思ててんけどさ。


「犯人の男、トラックの運転手やってんけど。
飲酒運転で仕事クビになったとこでな、
勤め先の運送会社のトラック盗み出したんや。
ぼんぼんの多い、ここの大学の学生狙いうちした、
言うてるから、確信犯や」


刑事さんの話に背筋強張った。


「君、神山財閥の一人息子さんなんやてな。
どこで恨みこうてるか分からへんから。
ほんま気をつけてな」


「はい。ありがとうございます」


答えた神山くんの手ぇ、少し震えてる。


安心させたくて、その手を包み込むようにして、握りしめた。


刑事さんが帰ってかはって、
慌てて、手を離す。


「重岡くん、ごめんな？」


なんでか、神山くんが謝るから。


俺まで泣きそうになる。


「謝らんでええ。
悪いのは犯人やし。
俺、この通り、ぴんぴんしとるしな！」


「うん・・・」


「今日は軽音部の練習行くんやろ？
お腹、もう治った？」


「うん、お腹は平気。
医務室の整腸剤、めちゃ効くねん」


「そんなん言うて、
また調子乗って地下食で食べたらあかんよ？」


「平気やもん。
重岡くんと一緒に昼ごはんしたいのに」


ドキドキドキドキ。

心臓、壊れそうや。


俺もやで、って言うてあげたいけど、

やっぱ、勇気のないあかんたれの俺。


「あかんのはあかんの。
ほら、行こか」


「うんっ、」

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