学園は今日も平和です【ツイステ】 (ページ6)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:10,170 hit

放課後と迷路～前編～ページ6

「しまった…完全に迷った…」

迷いやすい路(みち)と書いて迷路。まあ、この寮の庭は迷路となる意図で作られているので、まさに名に恥じぬ存在を今僕に示してくれている。
この寮生となってはや一年が過ぎたところだが、そういえばパーティー以外で自主的に庭へ赴いたことがないと思い立った時にはカメラを片手に部屋を飛び出していた。
廊下ですれ違ったトレイ先輩に、門限までには帰って来いよ、と声をかけてもらったのが遠い昔のようだ。

日が落ちてどのくらい経ったのか、辺りは暗闇に包まれて探索はより困難を極めていた。塀は身長より遥か高く、どれだけ歩けど景色は変わらず薔薇と植木の壁だ。更に、Aは本当にカメラ”だけ“を片手に寮を出たのだ。スマホも今は自室の机の上でただの板と成り果てている。

(最悪だ…。連絡も、時間の確認もできない…。)

空では星が輝き始め、腹は空腹を訴えている。
自分はこのまま死ぬのではないかという気もしてきた。運良く出られたとしても、門限を過ぎていれば寮長に首を刎られる。どちらにせよ地獄だ。
嗚呼、神様仏様。お願いですからどうかお慈悲を。

「お腹すいた…まだ死にたくない…。」
「大丈夫すか？なに、死にそうなの？」

後ろから突然声がしたので振り返れば、暗くてよく見えないがおそらく同寮の生徒が、不思議そうにこちらを見ていた。

「先輩…っすよね？てか、時間やばくないんですか？もうすぐ門限ですけど。」

神様…と思わず声が漏れた。神は僕を見捨てなかった。迷子になっていたと伝えると、小馬鹿にしたようにプッと笑われたような気がしたが、気のせいということにしておこう。

「俺も時間やばかったから、ショートカットしてたんすよ。急ぎましょ！」

もう首刎られんのは勘弁だわ、と呟く彼に手を引かれ迷路を駆け抜ける。さっきまでの不安な気持ちを置き去りにするように、ぐんぐんと。

寮の扉を突き破るかの勢いで開き、中へ飛び込んだ。
なんとか間に合ったようだ。ふぃ～、と爽やかに一息つく彼とは反対に、乱れた呼吸を整えるのに精一杯だ。ひとまず、お礼を言おうと彼を見上げる。
先程まで暗くて見えなかったが、左目にハートのペイントをした噂の…

「トラッポラくん、助かったよ、ありがとう」
「どいたま。そんで、迷子になっちゃってたドジっ子先輩のお名前は…「A！！」

突然、大きな声で呼ばれた。

to be continued…