Episode57 ページ7
「うわっ、何ですかこれ。」
Aの部屋の扉を開けると、山積みされた荷物に廊下が塞がれていた。
そういえば昨日家具が届く予定だったっけ。
昨日の朝、太宰と部屋を出てから一度も自室に戻っていなかったのだ。
「一応部屋の中には運んだんだが、勝手に配置する訳にもいかねぇからな。まだそんなに遅くねぇし、今からやるなら手伝うぞ。」
部屋までは中也が運んでくれたらしい。
Aが買ったのはソファとテレビ、ローテーブル、チェスト、ドレッサー、小さめの食器棚に、執務用の机、椅子、本棚。
中也の異能を使っても中々に手間のかかる仕事だっただろう。
「わざわざありがとうございます。じゃあ夕飯は私がご馳走しますね。」
二人は早速、家具の配置に取り掛かった。
………………………………………………………
一時間ちょっとで配置を終えると、殺風景だったAの部屋も少し華やかになった。
中也はソファで休みながらAが夕食を作るのを待っている。
食材を切る作業も手慣れたものだ。
考え事をしながらでも手際良く調理を進めていく。
中也さんと出会ってからまだ一ヶ月も経ってないのか。
色々なことが一気に起こりすぎて理解が追いつかない。
初めてのことが多く、毎日が目まぐるしい。
それでも楽しく、充実した日々だ。
こんな私が本物であって欲しい。
昨日から心のどこかに自分ではない誰かがいる。
いや、昨日まで気付かなかっただけで、ずっと前からそこにいたのだ。
紅葉と笑っていても、中也と話していても、誰かに見られているような気がする。
きっと『彼女』が私に訴えているのだろう。
忘れるな、と。
幸せに笑う権利はお前には無いのだ、と。
あの男の子を忘れたまま生きることは、きっと『彼女』が許してくれない。
「食器出そうか？」
匂いにつられた中也がキッチンに入ってくる。
「じゃあ深皿お願いします。」
注がれたシチューの美味しそうな湯気の向こうに、やはり誰かの視線を感じた。
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noel(プロフ) - あやねっちさん» 嬉しいです！！ありがとうございます、これからも頑張ります (2020年4月4日 18時) (
レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
あやねっち - 1からここまでよみました 最高でした更新楽しみにしていますね (2020年4月4日 16時) (レス) id: a393e3772d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：noel | 作成日時：2020年3月30日 9時
