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Episode83 ページ34

__________五年前、クリスマス




目の前の光景に目が眩む。

倒れているのは先程まで楽しく会話を弾ませながら、編み物を教えてくれた侍女。

視界を真っ赤に染め上げるのは血
涙に混ざり、頬を伝うのは血
髪から滴り落ちるのは血

叫び声にならない、掠れた音が漏れる。

女の胸から吹き出した血を全身に受けたジェーンの髪は赤とも黒ともつかない色に染まる。

黒髪に見えるようで、光を当てると深い真紅に光る。

それはジェーンの母親の髪色に酷く似ていた。

「……あぁ、何て美しい!」

ブライアンの顔から怒りは消え失せ、まさに狂喜乱舞せんとするばかりの笑み。

思考停止しているジェーンにそっと歩み寄り、その身体を抱き寄せる。

「もう大丈夫だよ、僕のジェーン。君をそそのかす魔物はもう居ない。さぁ、その顔をもっとよく見せておくれ。」

ブライアンに掴まれた肩はガタガタと震え、瞳から絶えず赤い涙が流れていた。

………………………………………………………

「お呼びでしょうか。」

怯えたままのジェーンを何とか寝かしつけた後、リチャードはブライアンに呼び出された。

室内に入るとブライアンがグラスのワインの色を確かめるように月明かりにかざしている。

納得がいかなかったのかグラスを床に叩きつける。
柔らかな絨毯は水分を吸収し、ワインレッドに染まる。

机の上のボトルは、ワインセラーにあるコレクションの中でも、最高級のもの。

「違う…。こんな安っぽい色じゃないんだ!もっと濃い、深い、あぁ、ジェーン!!君は本当に美しい。」

まさに狂気。
すぐにでも部屋を出たい気をぐっと堪え、リチャードはブライアンの言葉を待つ。

「…….君も見ただろう?月明かりの下、血に染まる彼女を。聖夜に舞い降りた天使、いや悪魔か!それにあの表情!堪らないよ!」

リチャードも事態を横で見ていた。

父親譲りの金髪を血に染めたジェーンは、彼女の母親の生写しだった。

「あの女は馬鹿だった。無くしたものを追いかけて、自ら命を断つとは。でもジェーンは違う!彼女は賢い。そして彼女を奪う者はもういない。」

この男がこれ程までジェーンに固執する理由。
それは彼女の母親にあった。

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noel(プロフ) - あやねっちさん» 嬉しいです!!ありがとうございます、これからも頑張ります (2020年4月4日 18時) (レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
あやねっち - 1からここまでよみました 最高でした更新楽しみにしていますね (2020年4月4日 16時) (レス) id: a393e3772d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:noel | 作成日時:2020年3月30日 9時

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