秘密事 (ページ2)

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私の言う事なんでも聞いてくれるんでしょ？
なんて少し上目遣いで見つめてみる
あざといかなぁ、流石に

そんな考えとは相反して、本当に照れたように目を逸らされた
それから、うーんとか、えーとか言って、どうにか私の願いを叶えようとしてくれてるみたい
瞬間、パチッと目が合って

「じゃあ、仕事はもう辞めちゃって、俺と結婚するっていうのは？」

思ってたよりも悪いことでびっくりした
仕事辞めるなんて
せいぜい、深夜なのにアイス食べちゃう、とか、このままもう少し夜更かしする、とかのつもりだったのに

え、あれ、悪いこと何にも無いじゃん

『あの、直樹くん？』
「ちなみに今のは、絶対想像出来ないタイミングでプロポーズするっていうやつ。俺も悪いことしてみた」

いやいや、そんな勝手に種明かしして、「つい出来心で、てへへ」みたいに笑われても、頭の中が整理される訳でも無いのに

「ずっとさ、Aが辛そうなのに、何も出来ないのが悔しくて、まだまだ頑張るつもりだけど、大人二人がまともに生活出来るぐらいにはちゃんとしてるよ、俺」

真面目な顔でこちらを見てくる彼の瞳には、私しか写っていない
私を捕らえて、動く気配も無い
だんだんと視界が揺れてきて、どうしよう

『悪いこと、じゃないよ、それ』
「そう？」
『仕事辞めるだけでしょ？』
「芸人と結婚するって、かなり悪いことでしょ」
『残念、私的にはノーダメージです』
「えっ、ということは…？」

『うーん、でも、直樹くんの案、採用』

彼の目が少し開いて、でもすぐに悪戯っぽく微笑んだ
共犯だと言わんばかりに

「良かった、ありがとう、ほんとに、うん、ありがとう」
『うん、こちらこそ、ありがとう』
「あー、なんかめっちゃ良いな、ね、おいで、悪いことしたAさん」
『おいでって、もう十分近いけどね、悪いことした直樹くん』
「悪いやつ同士、お似合いじゃん」

さっきよりも、きつくきつく抱き締められて、彼の腕の中からはもう、抜け出せない
体温がじんわり共有されて、私と同じ香りのパジャマで息が苦しくなってきて、くるしい、と言ったら力が少し緩んだ
いなくならないでね、と少し幼い声で呟きながら

私の涙が、こっそりパジャマの色を変えていく
もう抜け出そうなんて思わないからさ、
あなたの方こそ絶対に、いなくならないでね

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