この世界で君は (ページ30)

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西畑side

『proo・・・大吾、良かった・・」

　結局我慢できずに正門に電話してしまった。

「会いたい、正門、帰りたい・・・」

　涙が止まらなくて困った。

正門は電話越しで西畑の名前を呼んでくれている。

『うん、今日の夜中ぐらいになるかもしれないけど・・迎えに行く」

　まだ帰ってない。心の中で言い聞かせてグッとこらえた。

「待っててええか？」

　そう聞く「ともちろん」といつも通りの正門が返ってきて安心した。

　しばらく雑談していたが、電話の奥で正門が呼ばれている。

「ありがとう正門じゃあ、が、頑張れ・・・」

　可愛らしい１言が言いたいが言えない西畑に、正門が笑っている。

『うん、頑張る！大吾・・・大好きやで」

　本当にこの人はずるい。

　正門と話したおかげで落ち着いた気持ちになり、紫耀が待っている駐車場に向かった。

「あ、しょ・・・」

　紫耀を見つけて振ろうとした手を引っ込める。

　そこにいた紫耀はただ黙って廉の腕を掴んでいた。

　その眼差しは痛いほど真っ直ぐ廉に向いている。

　廉は顔を真っ赤にしてうつむいていた。

　

　2人に何かがあったことだけ、それだけは分かった。

　

　