この世界で君は (ページ13)

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「多分うすうす気づいてると思うねんけど、西畑は男性妊娠なんや」

　廉は特に驚いた様子もなく頷いた。そして、西畑にお茶を出す準備を始め、ほうじ茶を手にした。

「そんでな、今、お腹に、、、やねん」

廉「ん?聞こえへんもう1回言うてや」

　西畑は覚悟を決めて息を吸った。

「お腹に正門との子どもがいんねん！！」

　一気に言ってしまうと、部屋が静まり返った。ほうじ茶のティーパックが落ちた音以外、しばらくの間何の音もたたない。

　先に沈黙を破ったのは廉だった。

廉「・・・正門は知っとるん？」

　西畑は泣くのをこらえて首を横に振る。

　廉の顔には「俺が最初でええんか？」と書いてある気がした。

「廉は気づいてたやん、それなのに側にいてくれたから。廉に伝えたかったんよ。」

　お互いの顔に涙は流れなかった。

　廉の眼差しは痛いほど真っ直ぐだった。

「廉、本当のこと教えてや、西畑は気持ち悪い？嫌やよな、こんなやつ」

廉「気づいてたで、ずっと。気づいたときは驚きが無かったわけやない」

　廉の震える言葉を聞き逃さないように耳をすました。

廉「せやけど、俺が好きになった大吾は妊娠したら消えてしまうわけやないし。それで大吾と離れる方が辛いやん、、」

　廉の精一杯の笑顔と言葉に包まれている感覚になった。

廉「きっと・・・正門も一緒や、正門は大吾という存在自体が好きで好きで仕方ないから」

　
　廉は一度席を立って、「カフェインはダメやな」と呟きながら水を手にして戻ってきた。

廉「大吾も好きなんやろ？」

「へ？」

　急なことに驚いて、変な声を出してしまった。

廉「正門のことやで！そして、お腹の中の子供のこと」

「何で・・・」

　廉は「バカだ」というような表情で目を見開いた。

廉「紫耀に運ばれて来た時、大吾ずっとお腹守ってたで。それに、覚えてへんと思うけど、赤ちゃん無事か？って何度も聞いてきたんやで」

　無意識に西畑の右手はお腹にあった。

　体温が手のひらにじわじわと伝わってくる。この子を守らないと、ただそう思った。