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きみは。 ページ29
ふと視線を上にあげると
大きな、大きな虹がかかっていた。
たしか、あの日も＿＿
ちゃんと、覚えてる。
今日は、結婚記念日。
もう、2年がたった。
…なんで、あの時言えなかったんだろう。
…なんで、言ってあげられなかったんだろう。
ちゃんと、伝えてあげるべきだった。
…気づくのが、遅すぎた。
なんて、後悔しても
君が戻ってくるわけではないんだけど。
「見て、A。虹が綺麗だよ」
あの日Aが言ったその言葉を呟く。
どうせ、隣で一緒に見てるんでしょ？
＿＿＿『私の方が、何？』
悪戯っぽく笑いながら
そう言ってくる声が聞こえた気がした。
「…欲しがりだなぁ」
今なら、言える。
ちゃんと言えなかった、言葉。
見上げた先にあるものより
君は…
Aは…
「あの虹より、綺麗だよ」
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作者名：橋本 ゆる | 作成日時：2022年1月25日 22時
