それはまるで蝶のようだった (ページ18)

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親の心、子の心ページ18

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「ただいま」

「おかえり」

家に帰ると仕事が休みらしいママが
ダイニングで家計簿をつけていた。

「ママ、これ」

「ん？進路面談？」

学校で渡された進路面談のお知らせを渡すと
「こんな時期なのにまだやるのね～」と
ママがため息をついた。

それから、ゆっくりと顔を上げる。

「 …A、どうするか決めたの？」

若干、遠慮がちに言った言葉は
私とママの間ではタブーだった言葉だ。

「 ……まだ、何も」

私が答えると
ママはまた、ため息をついた。

「 ……ずっと言わなかったけど、
あんた本当に進路考えてるの？」

「 ……考えてるよ」

「嘘。まだダンスのことが
頭から離れてないでしょ」

「……っ、」

「それとも、怪我してから
悲劇のヒロインの気分でいるんじゃないの？」

「！そんなことない！」

「じゃあ、どうして決められないのよ」

「こんな簡単なことなのに」と
吐き出された言葉に怒りがわいた。

「ママに私の気持ちが分かる！？

今までずっと大切にしてたものを
いきなり失うはめになって、
もう少しで掴めそうだった未来も
全部台無しになって…！！

それなのに、今更
『別の道を考えろ』って言われても
そんなの無理に決まってるじゃないッ！

こんな人生なら、
もうどうなったっていいよ！

放っておいて！！！」

「 A！！待ちなさい！！」

ママの声なんて無視して
自分の部屋に駆け込んだ。

私の人生は１回きりなのに、
そんな軽く思われていたことが
とてつもなくムカついた。

でも、それよりも悲しかった。

ママは誰よりも私を分かってくれてると
そう思ってたから。

「もう、どうしたらいいの…… 」

枕を顔を埋めて
声を殺して泣いた。

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