【37】 ページ37
「落ちちゃった…。」
「はい、俺の勝ちー。」
「悔しい…。」
楽しそうに笑うその声に、また悔しさが募る。
「罰ゲームは何にしよっかな。」
「えっ、罰ゲーム？！」
「勝負には付き物でしょ？」
「何、すればいいの…？」
「‥じゃあ、俺の言うこと聞いてもらおっかな。」
そう問えば、意地悪に口角を上げた彼はそう言った。
「とりあえず、こっち向いて。」
「それは、いいけ、…っ、」
優しい口調で甘い命令を下した彼は、
私の首根っこを捕まえて、２人に間にあった距離をゼロにした。
触れ合った唇が甘い熱を共有した後、
鼻先が触れてしまいそうな距離に彼の顔があることで、
キスをしたのだと理解する。
「み、んな、居るのに、…っ、」
「見てねぇよ。」
少し乱暴なその言葉遣いにさえ、きゅんとしてしまう。
その掠れた色っぽい声を、何人の女の子が聞いたんだろう。
「怖い…。」
「‥何が。」
色素の薄いその瞳が、私を捕えた。
こんなに好きにさせて、
この人は私のことをどうしたいんだろう。
恋する乙女はいつだって忙しくて、いつだってもどかしい。
「和也くんしか見えなくなっちゃいそうで、怖い。」
「はっ、」
ぽつり、と言葉を落とせば、彼は不敵な笑みを浮かべる。
「別に何も怖くないでしょ。」
「え？」
「どうせ、俺以外なんて見る必要ないんだから。」
「へ、っ…、」
打ち上げ花火が空に咲いたのと同時に、彼はまたキスを落とした。
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作者名：和音
| 作成日時：2019年5月4日 17時
