【13】 ページ13
彼のお願いを拒否することなんてもちろんしないし。
断る理由なんてないから、
彼の要望通り、ハンバーグを作った。
「ん、美味い。」
「良かった…。」
目の前で美味しそうに食べてくれている彼の姿に、
ほっと安堵の息を吐くと。
「なに、緊張してたの？」
「するよ。」
口許についたソースを親指で拭いながら、
可笑しそうに笑ってそう言った。
お箸で取るその１口の量が多くて、
リスみたいにほっぺを膨らまして、
もぐもぐしてるその姿が可愛い。
「あによ。」
「何でもないよ。」
口に入れ過ぎて、
ちゃんと発音できてない所がまた可愛くて。
あぁ、好きだなって。
また好きの気持ちが積もっていく。
「見惚れてないで、早く食べなさいよ。」
「‥見惚れてませーん。」
「嘘つくならもっと上手につきなさいよ。」
「‥和也くんが鋭すぎるのが悪いんじゃん。」
「何で俺のせいなんだよ。」
そんな理不尽な言い訳さえ、優しく笑って受け止めてくれる。
「ごちそうさまでした。」
「お粗末さまでした。」
食べ終わったお皿を片付けようと、それに手を伸ばすと。
「いいよ、俺やるから。」
「え？いいよ、私やるよ。」
そう言う私に、ただ優しい笑顔を浮かべた彼は。
「座ってな。」
私の手にあったお皿を取って、キッチンへと向かった。
そういう所、
「‥好きだなぁ。」
・
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作者名：和音
| 作成日時：2019年5月4日 17時
