それはあなたの最期の言葉でした。２【Satoshi.O】 (ページ9)

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お昼前。

まだまだ動く手でスケッチブックに絵を描いていた智の耳に、扉をノックする音が響く。

「どうぞー」

「絵描いてたんだ」

「うん。暇でさ(笑)」

「そっか(笑) あのさ、にぃ、何が欲しい？」

「え？」

「明日、誕生日じゃん」

すっかり忘れていた。

しばらくうーんと唸りながら考える。

「時間、かな」

「え」

「ふふっ、そんなマジになるなって(笑) 嘘だよ。大体時間なんて無理でしょ？(笑)」

「……ふは、そうだよな！もう、にぃ！(笑)」

「何でも良いよ、翔がくれるなら全部受け取るよ」

「分かった。じゃあ楽しみにしてて」

時間。

いつ、自分の身体が動かなくなるか分からない。

いつ、死んでしまうかも分からない。

俺には時間が無いんだ。

そう思うと、またこの上ない不安と恐怖に襲われる。

それを紛らわせるように、智はまた絵の世界へと潜り込んだ。

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「うーん、何でも良いかぁ」

誕生日は明日。

明日に間に合わせないといけないから、翔は智に希望を聞いた後すぐに家を出て買い物に来た。

だが、これが俗に言う『何でも良いが一番困る』ってヤツだ。

時間と答えた兄に、何も返せなかった。

俺に出来ることなんてたかが知れてる。

翔は拳をぎゅっと握った。