それはあなたの最期の言葉でした。２【Satoshi.O】 (ページ39)

今日:11 hit、昨日:8 hit、合計:44,999 hit

◆◇６９◇◆ ページ39

　
　
・

・

あれから数年、残暑が感じられる秋を迎えたある日の昼前。

毎月決まった日に訪れる墓地へ今日も1人で訪れると見慣れた、でも懐かしい姿を見つけて声を掛けた。

「あれ、翔にぃ？」

「おぉ、雅紀。久しぶり。正月以来？」

「そうだね。華ちゃん元気？」

「うん。女の子なのにスゲー天真爛漫なんだわ(笑) でも今ちょっと風邪引いてて、だから1人で来た」

華、とは翔の子どもだ。

一昨年綺麗な妻と結婚して、翌年に誕生したからもう時期1歳になるはずだ。

「来月の命日、忙しくて来れそうにないからさ」

「そっか。俺も本格的に店継いだからおかげさまでちょっと忙しい(笑) ウチ寄ってく？」

「夕方の便で帰るから、昼飯だけ食ってくわ」

そんな会話をしながら墓石に水を掛けて丁寧に拭いて、好きだった食べ物とかを並べる。

そしてしゃがんで2人で手を合わせる。

思いはそれぞれだ。

でも空の上の彼に伝えたいことは、結局同じ。

──にぃ、俺たちは元気でやってるよ。

今もきっとどこかで見守っているのだろう。

家に帰って少し過ごした後、じゃあ、と言って翔は再び故郷を離れて築いた家族の元へ帰って行った。