それはあなたの最期の言葉でした。２【Satoshi.O】 (ページ36)

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「動画？」

開いたフォルダにはたった1つ、動画が保存されていた。

彼が動画を撮っている姿は、翔は一度も見たことがなかった。

少し赤っぽいサムネイルのそれを、不思議に思いながらタップして再生させる。

『あ……』

赤く見えていたものは手で、どうやら撮影開始するときにスマホのカメラを隠していたようだ。

その手が避けられて見えたのは、まだ特に変化も感じられない智だった。

撮影日は……病気が発覚して1ヶ月ほど経った頃の梅雨真っ只中の時期となっている。

姿勢を直して、動画に集中する。

『どうも。智です。11月で21歳！あ、これ恥ずかしいな(笑) 見てるのは誰かな？翔？雅紀？まぁ誰でも良いか。んふふ。』

「俺だよ、翔だよ、にぃ」

度々見せるホワホワとした笑い声に、翔も思わず頬を緩ませてそんな風に答える。

彼の耳には届かないけれど。

『これを見てるっていうことは、俺はもう逝ったんだね。……そっか、俺死んだのか』

しみじみとでも実感無さそうに、いや動画を撮影したのは亡くなる前だから当たり前なのだが、そんな風に呟く画面の中の兄。

下を向いて黙り込んだと思えばゆっくり顔を上げて、画面を捉えたその目と自分の目を交わらせようと見つめる。

沈黙を破った、

『ごめんね。でも……ありがとう』

という言葉に、自然と翔の目からは熱いものが流れた。