それはあなたの最期の言葉でした。２【Satoshi.O】 (ページ29)

今日:7 hit、昨日:1 hit、合計:44,987 hit

◆◇５９◇◆ ページ29

　
　
・

・

1年は、どうして早く感じるのだろう。

ついこの間まで春だったはずが、段々外は暑くなっていって学生最後の夏休みが明け、その直後、潤は在籍する大学の法科大学院の受験日当日を迎えた。

いつも通り『行ってきます』と出て行くその面持ちは、やはり少し緊張しているよう。

雅紀は、いつも通りの笑顔でそんな彼を見送った。

・

10日後。

昼休み、今日は翔と同期2人の3人でテーブルを囲み何となくの気分で初めて頼んだメニューを半分ほど食べた頃、胸ポケットに入れていたスマホが震えた。

「潤からだ」

「あ、弟くん？今日発表なんだっけ」

「そう。ハァー、緊張する」

「お前が緊張してどうすんだよ(笑)」

「ふは、そうだな。……よし」

深呼吸を一つして。

メッセージをタップすれば、嬉しい『合格』の文字と喜びに満ちた潤の言葉が送信されていた。

「やった！合格した！」

思わず人目を気にせず声を上げると、目の前の2人から祝いの言葉をもらって、自分が合格したわけでもないのにと思いつつも、翔は嬉しさのあまり『ありがとう』と言った。

その良い機嫌のまま仕事をハイペースで終わらせて定時で上がり、智の所に寄って2人で喜んで家へ帰ると、テーブルにはお祝いの料理が並んでいた。