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◆◇５０◇◆ ページ20
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「ただいま〜」
「おかえり。忙しいんだから毎日来なくて良いのに」
「いいの。にぃは疲れを癒してくれるし、何より俺が来たいから来てんの」
「そっか」
「まぁ、潤も弁護士目指して勉強頑張ってるから邪魔にならないように、っていうのもあるけど」
午後7時過ぎの面会時間終了間際、仕事から真っ直ぐ智の元へやって来た翔は、そんなことを言った。
3年になった潤は、最難関の国家試験合格を目標に日々勉学に励んでいて、邪魔はしたくないと言う翔。
そんな彼に、智は「早く帰って、ご飯作ってやんな」と助言するや否やまた明日、と言って翔は帰って行く。
しっかりと地面に足を付けて、歩みを進める。
自分だって、気持ちでは歩くことが出来るのに。
腕を使って自由に絵を描くことも出来るのに。
身体が思うように動かない。
その後ろ姿を見た智は一人、微かに肩を震わせた。
涙を流してももう自分で拭うことも……出来なくなってしまった。
「どうして、俺は生きてるんだ……」
何も出来ない自分に、今まで1度も思わなかった疑問。
このどうしようも出来ない現実と彼の気持ちを、誰が分かってあげられるのだろうか……？
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作者名：彩佑実 | 作成日時：2017年9月18日 14時
