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執着 ページ6

side Ren

これは翔太くんの所に移動するまでの話。
GIFT事件以降、俺は足を洗ったものの、舘さんへの想いは燻ったまま、残っていた。
だから、偶に俺の能力「瞬間移動」を利用し、こうして舘さんの居場所、いや、舘さんが生きている事を把握する事で心の底に眠る気持ちを抑えている。

「…っ!」

医務室で飛び起きた舘さん。
悪夢でも見てしまったのかな?
辺りを見渡し…多分だけど、翔太くんを探してる。

「め、目黒。」

「阿部くん、舘さん起きたよー。」

実は俺、阿部くんが働く医務室でお手伝いしている。自分の能力を活かし、阿部くんの能力で早急に治さないとならない怪我人(警察関係者)を運ぶ役割。
言わば、救急車的なポジション。

「翔太は、翔太は何処だっ!」

「落ち着いて、舘さん。翔太は仕事に向かったよ。」

「…俺…無しでか?」

「仕方無いよ。今の舘さんが無理して仕事した所で何か得られるとは限らないでしょ。」

「だからって俺が居なかったら、特殊能力絡みの事件は食い止められない筈だ!」

珍しく焦っている舘さん。
それにしても、お世辞にも顔色が良くない。

「まあ、無能なメンバーたちですから。」

「目黒、舘さんを煽るな。」

「……渡辺クンはあくまで取り調べ向きであって現場で力を振るう能力の持ち主じゃない。だから、俺は…。」

「でも、行かせないよ。そんな身体で行ったら、本当に壊れる。ギリギリの状態なの、自分で把握してないなんて言わせないよ?」

阿部くんのキツいお灸。
舘さんは唇を噛みしめ、阿部くんを睨む。
まあ、阿部くんは悪くないんだけどね。
俺と同じで、舘さんもまた「執着心」を持っている。

「……痛みが分からない。どれだけ、血を流そうが、凶器で体を深く突き刺そうが…俺は…代償として痛みを理解できない身体になった。ボロボロなのは分かる。でも…微塵も痛くないんだ。」

舘さんはため息を漏らし、煙草をくわえた。

「ここは禁煙っすよ、舘さん。」

「見逃してくれ、目黒。」

「煙草の一本や二本、吸ってないと苦しくて…色々とやってられない。」

目の前の現実も見てられないって事ですか?

「病人が煙草を吸うなんて言語道断。」

「…阿部も随分と言うようになったな。」

「翔太が舘さんに甘いからだよ。翔太は舘さんに注意できない。舘さんに拒絶されるのが怖いから。だから、彼が出来ない事を俺がやらないといけないの。」

舘さんは「…苦しい」と呟き、拳を強く握りしめた。

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作者名:赤雪 | 作成日時:2020年7月9日 23時

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