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安寧ページ35

side Ryota

やっと、打ち明けられた。
渡辺クンの目が潤んでいる。
今にも溢れそうな涙。

「俺の身体は元々の渡辺クンの能力に適合している。それは事実だ。適合はしているものの、この能力は強過ぎるが故に負荷が掛かる。俺は自覚しているが、無茶を重ねてきた。これ以上、無茶をし過ぎると命に関わると先生に言われたよ。」

「そんな…っ！」

「別に死ぬ訳じゃない。俺は渡辺クンの隣に立つ警察の犬じゃなくなるが、俺はこの能力を使わない事で生き延び、そして、恋人として隣に立ついう選択肢を選んだだけだ。」

これでいいんだ。
俺は追われるかもしれない。
「無効化」の能力に縛られてきた人生だったけど、これからは能力を使わないで静かに生きるんだ。

すると、翔太が俺に抱きついてきた。

「…っ！」

「ごめんね。本来なら俺の能力なのに…。色々と背負わせて辛い思いをさせて…。」

「……俺は最後まで君を守れない。ずっと守るって誓った筈なのに…。」

「そんなの気にしなくていい！涼太は涼太で居てくれれば、それでいい。」

「ありがとう。」

渡辺クンには感謝だね。
仕事以外では必ず、守るよ。
何かあったら駆けつけられるように。

「涼太は俺が刑事で居てほしいんだよね？」

「……ああは言ったけど、渡辺クンの人生だから自分自身で決めるべきだ。俺に縛られて嫌々、仕事をするなんて事があったら困るからね。」

「ううん、嫌なんかじゃない。涼太の能力を使わなくても平和にしてみせるよ。」

良い心がけだ。
俺はそっと渡辺クンの頭を撫で、目が合って、優しく唇を重ねた。
今だけは何も怖くない。
例え、狙われていたとしても翔太と一緒なら、乗り越えられそうな気がした。

・

・

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それから、渡辺クンは阿部、佐久間、康二、三人の説得により、俺を逃した点を罷免される事はなく無事に刑事として戻った。

俺は渡辺クンの家に転がり込む形に落ち着き、時々、渡辺クンの父親こと「先生」に会いに行くようになったし、目黒や深澤クンとの交流も強くなった。

ただ、街を歩くのが時々、怖くもなった。
俺は特殊能力を保持していて、尚且つその能力が強力なので狙われてもおかしくない。
その意識がいつまでも消えないし、見られてないとは分かっているが何故か視線を感じてしまう。

「隠居して充実しているからこそ、外に出た時の自由さが返って辛いのかもしれないな…。」

この自由こそが俺の「gift」なのかもしれない。