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ページ34

とある公園。
涼太をベンチに寝かせる。

「研究の範疇を超え、舘さんの能力目当てで遺伝子関係の実験に巻き込まれるとはね。」

阿部ちゃんが涼太の体に手を当てる。
じわじわと優しい緑の光が涼太を包み込む。

「正直、今の舘さんは見てられないっすね。GIFT関連事件以降、特殊能力の使用頻度が高すぎる。」

「……分かってる。警察の手となり足となって、身を粉にして特殊能力の犯罪から犠牲者を減らす、その一心で奮闘している。」

俺なんか、何にも出来てない。
心が読める能力なんか…。

「翔太は悪くないよ。」

「…阿部ちゃん。」

「舘さんだって責めてほしくないと思ってる。自分を責めても何にも良い事ないよ。今は今後の事を考えないと。」

「…そうだね。」

と言ってもどうすればいいのか分からない。
俺たちの逃げる場所なんて限られている。
きっと、追われるに違いない。
涼太は研究の材料として、俺は涼太を逃した罪について問う為に追われるんだ。

「…ううっ…。」

「涼太!」

涼太の目が覚めた。
瞬きを二、三回繰り返し、周囲を見渡す。

「俺の能力が出来る所まで全力を尽くしたよ。命に別状はないし、傷も修復済みだ。」

「ありがとう、阿部ちゃん。」

「……迷惑をかけた。」

「記憶とかは大丈夫?」

「ああ、全て取り戻している。心身ともに回復だ。」

「良かったぁ!」

「舘さん、助かったんすね。」

「よし、俺たちは撤収だ。」

「…そうっすね。」

「ありがとう。本当にありがとう。」

空気を察してくれたのか、気を遣ってくれたのか、二人は涼太が回復してすぐに去ってしまった。

「……今後の事だが、潔く警察に戻ろう。事情を話せば、納得してくれる筈だ。これには阿部も佐久間も康二も関わっている。これ以上、逃げたら取り返しがつかない。」

「でもっ!」

「……出来るなら、渡辺クンは刑事のままで居てほしい。だが、俺は警察に関わるのをもう辞める。エゴイストかもしれないけど…俺はいっぱいいっぱいで…限界だ。能力を使い過ぎて犯罪者になるよりは使わないで隠居していた方が良い筈だ。翔太、こんな俺を許してくれ。」

涼太の本音。
真っ直ぐだからこそ、突き刺さる。

「涼太がそれを望むなら。」

「正直、渡辺クンの隣で並んでいたかった。でも、渡辺クンの隣に並び続ける事で色々な弊害が生じる。それだけは避けたい。それに…。」

「それに?」

「この特殊能力を酷使すると俺の命に関わるから。」

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作者名:赤雪 | 作成日時:2020年7月9日 23時

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