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「何だよ、目黒。」
「舘さんが危険な状態だって知らないんすか?」
突然、俺を喫茶店に呼び出したと思えば、涼太について質問された。
「…どうしてそれを。」
噂には聞いていた。
研究の対象として涼太を乱雑に扱っている事を。
「これが警察のやり方っすか。気に入らない。」
「俺が動いて止められる問題じゃないんだよ。」
「それでいいんすか?いつまでも会えないままで。舘さんはどれだけの地獄を味わっているか…。全てはあんたの為なのに!」
そんな事、言われなくても分かってる。
涼太が無理して我慢して受け入れている事くらい、重々、承知している。
とにかく、一旦、涼太の様子を見ないと何も考えられない。
でも、会わせてもらえるだろうか?
見たら、俺はきっと…。
「ダメです。」
上司に掛け合ったら、面会拒否された。
何でダメなんだよ。
「どうして!」
「見て貴方に何が出来るんです?」
「それはっ!」
「彼を鳥籠から解き放っても誰が納得するのですか?」
「もしかしたら、涼太が危険な目にあっているかもしれないですよ?」
「警察組織管轄の研究員に限って、それは無いでしょう。」
「100%断言出来ますか?」
こうなったら、強引に行ってやるか…。
いつまでも従順な犬のままじゃない。
組織という名の飼い主に噛みつこうか…。
「…翔太クン。」
気付けば、涼太の居る施設に足を運んでいた。
「康二、立ち塞がるのか?」
「……。」
「何とか言えよ。」
「……あかんわ。」
「え?」
「二人を引き裂く悪役には、俺はなれへんよ。」
康二の目には涙が浮かんでいた。
それでこそ、康二だ。
「…康二。」
「……この奥、右から三番目の扉の部屋の中に居る筈やで。鍵、貸したるわ。」
「ありがとう。」
「ここだけの秘密やで。バレたら…まあ、なるようになるやろ。」
「ああ。」
俺は康二の説明通り、その扉の前に立った。久々の再会に緊張してきた。
鍵をゆっくりと開け、ドアノブを捻る。
「…涼太。」
涼太は頭を抱えるようにして横になっていた。
「涼太!涼太っ!」
揺すって起こすと涼太の目には俺が映ってない。ぼんやりとした表情を見せている。
「……えーっと、だ…誰…?」
「な、何言ってんだよ、涼太。俺だ、翔太だよ。」
「……しょう…た。」
そう呟くと涼太は頭を抱えて首を横に振りながら「分からない、覚えてない」と何度も呟いた。
「何で…。」
気づけば、自然と涙がこぼれていた。
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作者名:赤雪 | 作成日時:2020年7月9日 23時