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決断ページ23

「宮舘を撃て！」

そんな命令、素直に「分かりました」と従える訳が無い。むしろ、涼太に銃口を向けるなんてそんな事！

「眠らせて止めるだけだ。殺す訳ではない。」

「その後はっ、その後はどうなるんですか！涼太は捕まるんですか？警察管轄の研究施設に送られるんですか？それで能力の研究材料に使われるんですか？」

「そんな事は後の話だ。取り敢えず、今の危険な状態の宮舘を止めないと殺されるぞ！奴は最強なんだぞ？どんな能力も無効化にする。使えるのは拳銃などの武器のみ。使わないなんて言ったあかつきには命が無くなる！それでもいいのか、渡辺っ！」

でも、それでもっ！
涼太に銃口を向けるのは。

「何を迷っている？」

涼太が微笑んでそう言った。
酷く綺麗で、その紅い瞳が輝きを増す。
俺の持つ拳銃をゆっくり掴んで額に当てた。

「…どうせ、撃たれるのなら、渡辺クンが良い。」

「涼太、まだ、お前の理性は残ってるのか？」

「そんな事を聞いてる場合？殺意…溢れるように湧いてきて止まらないさ。でも、殺したら、俺は確実に牢屋に送り込まれる。その一心で、こうして踏み止まって、己の欲望ってヤツを抑えつけているんだ…！」

「りょお…た…うっ、い、いだ…いた、い。」

涼太の手が俺の首に掛かっている。
銃口はブレずに涼太の額に突きつけているけど。

「ハァ…ハァ…警察の無能どもに眠らされるのは我慢できない。もし、渡辺クンが撃たないなんて言ったら、失望ものだ。」

涼太に銃口を向けるのでやっとなのに。
撃つ事なんて限りなく不可能に近いよ。

「機械(システム)の判定通り、殺意剥き出しの危険人物。そんな俺を野放しにする刑事は国家の敵だ。渡辺クンが撃たないとなると誰もが軽蔑するね。ましてや、そんな事を抜かすのなら、殺意のままに首を絞めて、絶命させてあげるよ。」

「…涼太。」

安全装置を外す。
そして、引き金に指をかけるが、震える。

「翔太…躊躇うな。」

涼太はギリギリの状態だ。
理性が殺意に飲み込まれる限界まで来ている。

「で、でもっ！」

そんなの分かってるさ。
俺がやらないといけない。

「麻酔の銃弾を放つのも刑事としての務めだろうが！」

声を荒げ、口調が強くなる。
涼太の冷静沈着さと鋼の理性ですら、飲み込んでしまう殺意。

「…頼むよ…翔太。牢屋行きは勘弁だ。俺が人である為に…。俺の…わがままとして…受け入れてくれ。」

か細い声で振り絞った声。
もうこんな涼太は見たくない。