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事件ページ3

今、仕事として多いのが
能力者同士の喧嘩。

その取締りには「無効化」の能力保持者である涼太が重宝されている。
涼太にばかり負担がのしかかり、彼のストレスが溜まると共に、機械(システム)が判断する犯罪を起こす可能性を示す値がボーダーラインを超えていた。

「涼太、大丈夫？」

気の所為かもしれないが。彼の煙草の吸う本数が増えたようにも思える。

「…渡辺クンが気にする事じゃない。」

恋人だよな、俺たち…。
何でそんな風に距離を置こうとするんだよ。
未だに「渡辺クン」だし…。
まあ、今は呼び方なんて関係無いけど。
とにかく、涼太がいつも通りの涼太じゃない事だけは分かる。

「顔色だってあまり良くないだろ？」

「それを言うなら君だって…連日、取り調べで自分の能力、酷使して…そろそろ、キャパオーバーしても良いくらいだと思ってるよ。」

自分の能力…か。
本来なら、俺が涼太の能力で…。
涼太が俺の能力を使っているんだけど…。

「大丈夫だよ、俺は。」

「……もういい。この話し合いに生産性は無い。俺はやれるから、気にしなくて構わない。」

涼太はそう言うと煙草をくわえ、退屈そうな表情を浮かべたまま、目の前の特殊能力保持者同士の喧嘩の仲裁に加わった。

「ちょっ、涼太！」

お前の純白の白衣がボロボロだ。
破れたり、汚れたり、見てられない。
でも、当の本人は痛みを感じない。
それも俺の所為なんだけど…いや、今はそんな事より早く阿部ちゃんの所に向かわせたい。

「な、何なんだテメェ！」

「邪魔すんな！」

「……警察だ。争いを鎮め、平和や治安の維持するのが役目。貴様らはその役目を妨害する愚か者たちだ。だから、止めなければならない。」

涼太は淡々と自分の仕事を行う。
与えられた事をそのまま、完璧に。

《なっ、何だっ！？》

《ば、化物だっ！》

ああ、涼太の能力を見て怯える当事者たち。
心を読めるのは良い事でもあり、悪い事でもあると思わされる瞬間だ。
涼太を見て、みんな、恐れる。
同じ能力者なのに、別のモノと捉えられる。

そんな視線を向けられても尚、彼は警察の味方として俺の側で働き、協力してくれる。
これはもう、常人の精神力じゃない。

「……チッ、翔太、手錠！」

「あっ、わ、分かった。」

さり気なく「翔太」って呼んでくれた。
それが堪らなく嬉しい。

「あっ、涼太、腕！」

「……不覚にも切られた。でも、傷は浅い。」

涼太はそう言うと俺の頭を優しく撫でた。