Create (ページ18)

今日:13 hit、昨日:8 hit、合計:91,317 hit

▽ ページ18

side Hikaru

それから、GIFTという薬が流行った頃の事だ。正直、怖かった。
俺や彼の存在が知られるかもしれないと…。

GIFTの副作用…それは実験を思い出させた。
今度は安易に手に入る薬で、新たな犠牲が生まれる事が恐ろしかった。

そんな事を危惧している時、彼と再会した。

あの時より背が高くて、顔立ちも垢抜けて…第一印象は別人のようだった。
でも、目の色を見て分かった。
あの時の彼だ。
前よりもずっと闇が深くなっている。
そんな気がしたんだ。

「ボクの “使命” に協力して下さい、照くん ♪ 」

俺の名前を知っていた。
俺は君の名前をその時は知らなかったのに。

「何だよ、使命って。」

試しに話を聞いてみる事にした。
どうしても、彼を放ってはおけなかった。
彼を置いて逃げてしまった事も頭に残っていたから。

「ボクは全ての能力を余す事なく集める使命があります。その為に生まれ、その為の能力を授かった。」

「どういう事だ。」

「ボクの特殊能力は “模倣(コピー)” です。どんな能力もボクは真似し、自分のモノに出来る。きっと、この世界で “最強” と言っても過言では無い。そんな能力を得たボクは全ての能力を手に入れないといけない。」

「何故、手に入れる必要がある。そんなに最強になりたいのか？」

「それは分からないです。ただ、ボクが目を開けてから、先生たちにそう告げられた。こればボクに与えられた仕事であり、使命であり、生まれた意味だと。」

彼は記憶を消された所為でおかしくなっている。あの愚かな研究員たちの言いなりになっているだけだ。

「……ただ、ボクにはデメリットがある。」

彼が苦しそうに笑った。
これが最初で最後の笑顔だった。

「デメリット？」

「言い忘れてました。ボクは能力を模倣すればする程、体がボロボロになる。それ程、能力の模倣は大変であり、身を削る物なんです。」

見ていられなかった。
彼に手を差し伸べないと死ぬ。

「じゃあ、模倣なんかしなければいい。特殊能力を使おうとしなければ、君は生きられるんだろ？」

「そしたら、ボクは何の為に生きればいい？ボクが生まれた意味が分からなくなる。」

彼は絶望した目を向けた。
感情が激しく揺れ動いていた。
彼にとって、特殊能力は生きる意味。
「使うな」と言ったら、彼は死んだも同然という事になる。

「照くんの能力はボクのデメリットを補う為に生まれたと言ってもいい。ボクを強くしてよ、照くん ♪ 」