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残影ページ13

side Shota

涼太が阿部ちゃんの治療により、傷も消え、完全復活し、GIFT事件以前と変わりなく捜査一課の道具として扱われていた。
俺はそれを止めたい。
そう思っているのに、実際、権力の前にしがみ付いて従わざるを得ない。
俺こそ、上司に従順な犬なのかもしれない。

「…気遣いは無用だ。」

突然、俺の前に現れた涼太は心中を察したのか、休憩スペースで缶コーヒー片手にそう呟いた。

「俺は以前から言っているが、渡辺クンの仰せのままに従う犬だ。この特殊能力を活かす道は警察という名の組織に忠実に従うしか無いんだ。そろそろ、割り切るべきだ、渡辺クン。」

心を読む特殊能力は俺の物なのに、何でそんなに俺の気持ちが分かるんだよ。
俺はお前の心が読めないのに…。

「あのなー。俺は涼太と違ってはっきりと線引き出来るタイプじゃないんだよ。」

「……そんなの、知ってるさ。それが君らしさでもあるが…。だが、仕事の時ぐらい、しっかり割り切った方が良いとは思う。」

涼太はそう言うと目を閉じ、自分の世界に入る。俺を褒めつつ、自分の意見を述べる。
クールだけど、結局、涼太は良い奴なんだよな…。

そんな風に考えていた時、休憩スペースにあったテレビには異様な光景が広がっていた。
突如、画面がジャックされた。

「な、何だ？」

黒煙が上がり、燃え盛る自動車。
それに伴って渋滞を起こし、街はパニックになっていて、騒ぎを聞きつけたテレビ局のアナウンサーが必死にレポートしていた。

『な、何ですかっ、貴方！』

『ボクが嵐を起こし、この道を塞ぎました。ご覧のように車も炎上し、大パニック。それはまあ、お遊びに過ぎないっていうかぁ、ボクの欲しい能力を持つ能力者が出て来れば、この騒ぎを一瞬で止めてあげる。』

アナウンサーのマイクを奪い、笑みを浮かべて語るのは、前の事件で歯が立たなかった能力採集者(コレクター)こと「ラウール」だった。

『その欲しい能力者とは何なんでしょうか…。』

『特別ですよぉ、アナウンサーさん ♪ ボクが欲しいのは……無効化の特殊能力です。』

テレビから確かに聞こえた。
欲しい能力は「無効化の特殊能力」だと…。

「待て、涼太！」

涼太は缶コーヒーを潰し、廊下を駆け抜けていく。

「待てるか！騒ぎは元凶である俺が止めなければならない。」

「待て！まだ、上からの指示がっ！」

「そんな事、気にしてる暇はない！」

嫌な予感がする。
せめて、これが夢であってほしい。