7話.相性…？ ページ8
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腕に抱えた資料を机の上に置いたにもかかわらず、席につかない目の前の人物を不思議に思い、顔を上げると
腰辺りに提げていた黒の一部を外したと思えば、徐にそれを顔へ持っていくと
小気味良い音がして、顔を隠していた手が退けられる。
現れた顔にはコスチューム同様、黒の仮面____モチーフはカラスだろうか____が彼女の顔、上半分を覆うように付けられていた
「これが自分のヒーロー活動時のコスチュームになります」
なんだろう、怪しさが増した
読めない表情がさらに読めなくなった
「……確か、クロゥさん、でしたよね
その仮面もカッコいいですねー
ヒーロー名もそうだけど、モチーフはカラスですか？」
図らずして抱いてしまった疑心を隠しつつ、できる限り普遍的に思ったことを質問する。
「……呼び捨てでいいですし、敬語も結構です
あなたは私の上司になる人なんですから
あとこの仮面もコスチュームも、名前にも特に深い意味はありません。お話を続けましょう」
「あぁ、そう……だね」
無駄に玉砕した気分だ。気まずい。
この調子で、先が思いやられる。
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手渡された資料とともに、今回の件について彼女からの説明を受ける
彼女の説明はとても丁寧で、こちらが質問しても真摯に対応してくれた
それも終盤にかかり、話題は彼女___クロゥをうちの事務所に受け入れる日程の調整に入っていた。
「それで研修開始日ですが……
何時ごろから可能でしょうか」
「うん、会長にはできるだけ早くって言われてるし
まぁ……最短で再来月くらいからなら……」
「では、そうしましょう。
会長にも私が伝えておきます」
「あっ、でも今ウチ色々とゴタついてるから、
入ってもらってもしばらくは雑用係みたくなっちゃうかもだけど…」
「ええ、大丈夫です。事務所に置いてもらえるだけで……いえ、なんでもありません。目で盗んで学習するので問題ないです。勝手に勉強させてもらいます」
「……あっそう」
だが所々冷め切った物言いに少々面食らう。
「色々無知で不慣れではありますが
ご迷惑をおかけしないよう尽力しますので」
歯切れ良く喋っていた彼女の声が、そこで詰まったように止まった
「………よろしくお願いします」
数秒考え込むように視線を彷徨わせた後、ありきたりな挨拶が送られる
「こちらこそ」
にっこり、他所行きの顔で当たり障りのない返しをすると、彼女の不機嫌そうな顔はさらに歪んだ
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作者名：上白糖 | 作成日時：2019年8月23日 14時
