5話.あの子 ページ6
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後日、改めて公安から連絡をもらった俺は
話を聞くためにまた公安本部の廊下を歩いていた。
「珍しいものですね、
こんな頻度でまたあなたの顔が見れるなんて」
「そうですね」
前回同様、たまたまついそこで会った顔見知りと共に
目的地までの廊下を進む。
ついでに彼の胴を覆い隠さんとする数の資料ファイルを肩代わりしようとすると、
彼は困ったように笑い、「すぐ着きますから大丈夫です」と俺の手を避け、進む足を速めた。
「そういうのは女性職員にしたらいいんですよ」
「そんな贔屓たらしいことせんですよ」
本当ですか？と揶揄うように彼は言い、「ところで」
と、会話を切り替えた。
「今日はなんで呼ばれたんです？野暮用ですか？」
「んー、まあ、そんなところです」
そう答えれば、彼の口からはふーん、となんの感情もない声が吐き出されたのだが、
次の瞬間には思い当たることがあったのか、俯き気味だった顔がパッと上げられた
「ああ、あの子に会いにきたんですね」
「その言い方はちょっと語弊が。
……というか、あの人こと知ってたんですね」
「ええ。あなたの時と同様、一部の職員しかその存在は知りませんが、私は一時期、彼女の世話係でしたから」
「へえ、そうだったんですか」
「クロゥもついにヒーローデビューか……。君のところなら安心できる」
「はは、ありがとうございます」
「あの子のこと、よろしくお願いしますね」
「クロゥ……、その人について知っていることがあれば教えてくれませんか？」
思いついたようにそう訊ねると、少し怪訝な顔をされる。
「直接会ったのでは？」
「前回顔合わせはしたんですけど、あまり喋れなかったので、どんな人なんだろうなーと」
「そうですか」
数秒考え込むように視線を彷徨わせる。
「気難しい子だけれど、素直でいい子ですよ」
「なんかそれ、矛盾してません？」
「はは、ねぶそくですかね。考えるのが面倒臭い」
「ちゃんと寝てくださいね」
「君こそ、ちゃんと休んで、ほどほどに」
彼______、目良さんはそう言い残すと
すぐそこにあったドアのノブを器用に肘で開け、そして身体を滑り込ませるようにして扉の中へと消えた。
ぱたり、多少勢いを失いながら閉まった扉を見て思う。
言ってくれたら、扉くらい開けたのに。
読めないし食えない人だ、相変わらず
「さて、俺も急ぎますか」
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作者名：上白糖 | 作成日時：2019年8月23日 14時
