4話.詰問 ページ5
※7/14 内容変更
微妙な空気なりそれを仕切り直すべく再び口を開こうとしたところで、コンコンコンっ、とノックの音が響く。
「すみません、会長、
クロゥを見ませんでしたか？」
なんとタイミングの悪い、職員の誰かがこの青年を探しに来たようだ。
どうするんですか、と目の前の2人に視線で訴える。
「行きなさい、クロゥ」
「はい」
熱のない会長の声が、後ろに控えていた青年へ退室を促す。
抱えていた書類を机の上に置き、小走りに扉へと駆けていく。
横を通り抜けて行ったその背中を何気なく目で追うと扉まで行き着いた青年はノブを掴んだ状態で一度立ち止まり、不意にこちらへと振り返った。
視線が交差する。
目が合うとは思っていなかったのか、その目が少し驚いたように瞬いた。
「失礼します」
それからぎこちなく小さく会釈すると素早く部屋を出て行った。
扉が閉められ、二人分の声と足音が完全に遠のいていってからもう一度会長に向き直る。
「……で？ あの人、何者なんです？」
「何者、とは？」
この部屋に入ってから常々思っていた疑問をぶつけるが、逆に聞き返される。
この人とのこういう口の駆け引きは小難しくて少し面倒だ。
「今までの任務内容に後進育成なんてなかった。それに貴方直々の推薦なんて、しかも俺指定」
怪しまない方が馬鹿でしょう、と言葉にはせず
「一体何者なんですか。
最近まであんな人いませんでしたよね？」
「詳しい話はまた今度、改めて時間を取りましょう」
「言えない事ですか？せめて名前だけでも教えてくださいよ」
「……あの子のヒーロー名は『クロゥ』。私たちも普段からそう呼んでいる」
もう話すことは何も無い、ということを言外にほのめかすように背を向けられる。
今はこれ以上、情報を引き出すのは無理かな。
そう判断して開きかけた口を噤む。
「では、俺も今日は失礼します」
ぺこりと腰を折り、それから退室するべく扉へ向かう。
「また、連絡するわ。ホークス」
その声に振り返ると背けられていた顔がこちらを向いていた。
「ええ、お待ちしてますよ」
へらり、と網を貼り付け、心にもないことを言うと、
今度こそ、部屋を後にした。
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作者名：上白糖 | 作成日時：2019年8月23日 14時
