38話.空から ページ39
(no side).
「あー暇だな」
「おい、ちゃんと見張れよ」
膠着状態が続き気が緩み始めたらしい見張り役に、人質に武器を向けている拘束役が喝を飛ばす。
と、言っても、もうずいぶんと長い時間が過ぎているからかその声にも覇気がない。
いとも簡単に侵入を果し、金を手に入れた犯罪集団の構成員たちは、あとは逃げるだけ、という大仕事を手前にすでにだらけ始めてしまっている。
「下の連中、マジで立ち往生なんすかね。コッチには人質もいるってのに……。
なァ先輩！そんなかの1人、そろそろ吊し上げて催促しましょうや。さっさとしねえと人質みぃんなブチ殺しちまうぞって！」
気性の洗い見張り役の男が見張っていた窓に背を向け、拘束役の男の先に座らされている人質たちに銃を向けた。
銃を向けられた人質達は怯え、短い悲鳴を漏らす者もいた。
見張り役の勝手な行動に先輩と呼ばれた男がその射線に割って入る。
「そんな事しても逃げ辛くなるだけだ。コイツらには逃走中にも役に立ってもらう必要が」
「そーんなこと言ってぇ、この間に強いヒーロー呼ばれちゃオシマイでしょお？」
「……今この街にあの忌々しい
男の咎めるような口調に舌を打った見張り役は渋々銃を下ろし、任されている持ち場に目を向けた。
下ではまだ、大勢の警官と数人のヒーローらしき格好の奴が先程と変わらぬ状態で二の足を踏んでいる。
それを鼻で笑って、ふと空を見上げた。
何の変哲もない、陽の傾き始めた空を_____________
「………は」
男が違和感を感じる前よりも速く、目の前の窓ガラスが割れた。
何かが空から突っ込んできた。
その正体を認識する前に、後ろから呻き声がした。
振り返り、状況を把握しようとした瞬間、こちらに飛んできた何かが衝突し、銃を構える暇も個性を発現させる暇もなく、男の意識は沈黙した。
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作者名：上白糖 | 作成日時：2019年8月23日 14時
