28話.来訪 ページ30
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クロゥside
「彼が……ここに？」
思わず声が震えた。頭が真っ白になって思考がうまく繋げない。多忙な彼が、ここに？自分の病室に？
「……だ」
ダメだ。やってしまった。絶対に絞られる。
許可もなしに救護活動を行なった。紛れもない契約違反。
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ホークスside.
クロゥの見舞いに行っていた公安の職員から「意識が戻った」という連絡を受け、気付けば何故か「じゃあ今からそっち、行きます」と続けていた。
会話を終え受話器を置くと、サイドキックたちが呆けた顔で仕事の手を止めていた。
「………なんです」
「いや、なんでも」
もごもごと歯切れ悪く、それぞれが仕事に戻っていく。時たま不意にこちらを伺うような視線を振り切り、「ちょっと出てきます」と返事も待たずに言い置いて、事務所の戸をくぐった。
受付で聞いた部屋に足を踏み入れると、連絡にあったようにクロゥは目を覚まし、既に身を起こしている状態だった。
「お久しぶりです」
丸一日ぶりにその声を聞く。
顔色も、最後に事務所で見た時より随分マシになっていた。
「あぁ、………うん」
気のない返事が口から零れる。こういう時、咄嗟に何を言えばいいのか分からない。
この仕事を始めてから、真っ先に怪我を負うのは自分で、部下たちをあまり矢面に立たせることもなかったからだろうか。
誰かを見舞うこと自体初めてのことであった。
不意に手が差し出される。
「………なに」
「報告書、というより始末書を書かないとですよね。分かってます。身勝手で軽はずみな行動を取ったことは自覚してますから」
仕事。この期に及んで。
思わずため息が出る。
こういう人なのか、この人。
「俺は休めって指示したんだけど」
何も取り繕っていない素の言葉が出た。差し伸ばされは手は引っ込められたが、この新人は真っ当な顔で淡々と返してきた。
「助けを必要としていた人がいたので」
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作者名：上白糖 | 作成日時：2019年8月23日 14時
