【短編】夢世界。現の幻覚。過ぎさりし。【あほの坂田】 (ページ9)

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9つきページ9

『おいひ～、坂田のご飯は本当に美味しいよね』

坂田「ありがとう、そんなに褒められると照れるな」

いつもと変わらない日常

好きも嫌いもない日常

友達以上はない日常

友達以外ない日常

家族かもわからない日常

こんな日常は嫌いだ

昔を知らないAはこれでいいんだと思うけど

俺は昔を知っているから、こんなのじゃ物足りない

いつまで経ってもこの物足りなさは消えない

満足感もない

ただあるのは存在感

ここにいるだけマシだと思わなきゃならない

いつここにAが座らなくなるのかわからないのだから

『坂田？おーい！』

坂田「Aくん…」

『もしかして具合悪い？熱は…』

坂田「大丈夫、気にしなくてええよ」

『そう？ならいいけど、ご馳走さま』

坂田「お粗末さまでした」

今すぐ

昔のAを返して

神さま、俺のAはこんなやつじゃないんです

俺のAはこんな礼儀正しくない

料理を出しても黙って食べてるだけなんです

たまに口を開いたと思っても構ってはくれないんです

ちょっと抱きしめるとすぐ顔を赤くするやつなんです

頭を撫でると恥ずかしそうにしながらはにかむ可愛いやつなんです

俺のAはこんな素直じゃない

こんな可愛くない

もっと憎たらしくて、腹立たしくて…

俺のこと、坂田なんて呼ばないんですよ…

『坂田…？坂田！』

坂田「何でもない…何でもないから…大丈夫だから…」

『大丈夫じゃないやん！そんな泣くほど苦しいん？看病してあげるからベッド行こ？な？』

優しく手を引かれベッドに寝かしてくれるA

違う、違うやん、こんな優しくするやつやなかったやろ

お前の体調管理が悪いって叱ってくれたやん

そんな熱なんか測って寄り添ってくれなかったやん

早く治せよって殴り書きを残してるだけやったやないか

なんで、そんな優しくなったん