【短編】夢世界。現の幻覚。過ぎさりし。【あほの坂田】 (ページ13)

今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:959 hit

13つきページ13

あの日、ほんの数分だけど、Aの意識が戻った

注射を打って救急車を呼ぼうとした時だった

うらたさんってすごく小さな声が聞こえて

うらた「っ！？」

『うらたさん…俺…』

うらた「A！Aなのか！」

『俺…きっと死ぬ…からさ…二度と戻らねえから…』

『死ぬときは…優に見せないでくれ…俺のせいだって…泣かせたくない…』

『俺の声…録音、できますかね…っ？』

うらた「ああっ！」

うらた「これがその声だ、あいつに、死ぬかもしれないその日まで黙っててくれって言われてた」

『ゆ、う…俺だ…Aだ…今までこんな病気で困らせ、て悪かった…
俺は、もう死ぬから…優は…責めるなよ…？
これは俺、が…弱かったんだ…たかが病気に勝てなかった…死んでも仕方ない、から…さ…
優…お前の作る飯、めちゃくちゃ美味かった…
抱きしめられたとき、めちゃくちゃ嬉しかった…！
好きの一言も言ってやれなくてごめんな…？
でも、俺は優が大好きだからな…愛してるからな…
死んでも俺はお前が…優が…優だけが大好きだから…』

『っ…浮気とか…すんなよ…な…』

坂田「A…Aだ…優って呼んだ…俺のこと呼んでくれた…」

志麻「…生きてたら、いつか戻ってきてくれるかもな」

センラ「その日まで気長に待とうや、きっと好きって言ってくれるで」

手術室前の廊下で坂田は声を抑えることなく泣き続けた

手術中のランプが消えても泣き続けた

Aの手を握りながら、ずっと泣いていた